近年、日本でも耳にする機会が増えた「ギフテッド」。
日本の教育現場でも注目が集まっていますが、「実際にはどういう意味?」「どんな特徴があるの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ギフテッドの定義・特徴・日本での診断方法をわかりやすくまとめます。
また、ギフテッドに共通して見られる特徴の「過興奮性(OE)」と「非同期発達」についても詳しく解説します。
当サイトでは、筆者自身の実体験に基づき記しています。専門的な内容については以下の書籍を参考にしています。
参考書籍
『わが子がギフティッドかもしれないと思ったら 問題解決と飛躍のための実践的ガイド』ジェームス・T・ウェブ著
ギフテッドとは
ギフテッド(Gifted)とは?
ギフテッド(Gifted)とは、生まれつき知性や能力が高く、特定の分野で際立った才能を発揮する人のことです。
同年代の子どもよりも発達が早かったり、思考の深さ・感受性の鋭さなどで違いが見られる場合があります。
また、努力して優秀な成績を修める「秀才」とは異なり、ギフテッドは先天的に高い知性や能力をもつとされています。
つまり、早期教育や勉強を努力して「ギフテッドになる」というような言い方はしません。
「ギフテッド=天才」と誤解されがちですが、「万能な天才」というより、「特定の分野で非常に優れた力を持ちながらも、支援を必要とする子」です。

ギフテッド(Gifted)のアメリカにおける定義
アメリカでは、1972年に公表された「マーランド・レポート(EDUCATRION OF THE GIFTED AND TALENTED)」がギフテッド教育の基礎となっています。これが、ギフテッド教育の基本方針を定めた最初の公的文書で、今でも多くの州がこの定義をベースにしています。
マーランド・レポートによる定義
ギフテッドとは、突出した能力によって高い成果を上げることができる子ども。また、その潜在的な能力を秘めている場合の子どもも含む
その才能の領域は次のように定義されています。
- 知的能力
- 学問的能力
- 創造的・生産的思考
- 芸術的才能(視覚芸術や音楽など)
- リーダーシップ
- 運動能力
創造性やリーダーシップなど、学業以外の能力も同等に重視されています。さらに、「能力をすでに発揮している子」だけでなく、「潜在的に高い能力を持つ子」も含まれています。
NAGC(全米小児ギフテッド協会)による定義
また、全米小児ギフテッド協会「NAGC(National Association for Gifted Children)」は、「What is Giftedness?」の中で、定義を以下のようにしています。
Students with gifts and talents perform—or have the capability to perform—at higher levels compared to others of the same age, experience, and environment in one or more domains.
引用元 National Association for Gifted Children
つまり、ギフテッドは、ひとつまたは複数の分野で、同じ年齢、経験、環境の他の生徒と比較して、より高いレベルでパフォーマンスを発揮する能力がある人としています。
その潜在能力を発揮するためには、以下の3点が必要だとしています。
・適切な学習環境
・学習障害などの場合、専門的な介入
・社会的、感情的にも成長できるようにサポートや指導
ギフテッドの才能の領域については、アメリカの心理学者ハワード・ガードナー(Howard Gardner)による「MI理論」による8つの知能を用いられることがあります。
MI理論については以下に詳しく解説しています。

日本での診断方法
日本では、「ギフテッド」という言葉について定義されていません。
文部科学省は「特定分野に特異な才能のある児童生徒」という表現を使っており、「ギフテッド」という言葉は公式には採用していません。
また、現在国内においてギフテッドを診断する機関というのははっきりとはありません。
「ギフテッド」は医学的な診断名ではないため、診断という言葉は使用せず、「認定」「判定」といった言葉が用いられます。
日本での一般的な判定基準
WISC検査などでIQが130以上(上位2~3%)が一つの判断基準になっているようですが、知能テストのIQだけで判断するのは難しく、行動特性や感受性の高さなどもギフテッドかどうか見抜く手段の一つとされています。
また、インターネットのIQテストやギフテッド診断テスト、脳波などで測れるものではありません。
📎 関連記事:ギフテッドの診断はどこでできる?専門機関と流れを解説

ギフテッドの特徴 共通の行動特性
ギフテッドの判定方法の一つに知能検査がありますが、親にとってわが子がギフテッドかどうか見抜くには、行動特性が判断材料になることが多いようです。
ジェームス・T・ウェブ著『わが子がギフティッドかもしれないと思ったら』では、多くのギフテッド児に共通する行動特性として以下のような特徴を挙げています。
・乳幼児から並外れた注意力がみられる
・学習の呑み込みが早く、考えを素早く関連付けられまとめられる
・多量の情報保持、優れた記憶力
・年齢に対し並外れた豊富な語彙と複雑な文章構造をもつ
・単語のニュアンスや隠喩、抽象的なアイディアへの高度な理解力がある
・数字やパズルを好んで解く
・未就学のうちにほぼ独学で読み書きのスキルを身につける
・並外れた感情の深さ、激しい感情を持ったり反応をする。
・抽象的、複雑、論理的で洞察力のある思考
・幼少期から理想主義や正義感がみられる
・社会的、政治的問題や、不公正さや不公平さへ関心がある
・長時間の注意持続、粘り強さ、高い集中力
・自分の考えることで頭がいっぱいになる
・自分や他者のできない状態や遅い状態にいたたまれなくなる
・基本スキルをあまり練習せず素早く取得する
・鋭い質問 教えられたこと以上のことをする
・幅広く関心をもつ
・非常に発達した好奇心
・試したり違う方法で行ったりすることに興味をもつ
・通常使わないような方法で考えや物事をまとめる
・特徴的なユーモアセンスがある
・ゲームや複雑な図式をとおして人や物事をしきりたがる
・想像上の友達がいる(未就学児)
みていくとわかるように、単純に優秀であったり、賢いからギフテッドというわけではありません。
筆者の息子の場合も、このうち20項目ほどが一致しました。
あくまでも育てている私自身の感覚にはなりますが、頭の回転や理解が速い、という点だけではなく、ちょっと周りと考え方、感じ方、物事の捉え方、見ている視点が違う気がする。というのが母親目線での印象です。
もし育てていて「周りの子とは感覚が違う」「感情の振れ幅が大きい」と感じたら、ギフテッドの特徴に当てはまるかチェックリストとして利用してみてはいかがでしょうか。
👦わが家のケースをご紹介
知能テストのWISC-Ⅳ、いわゆるIQテストを9歳3か月の時に行ったのですが、息子は言語理解の部分が突出しており、IQ155以上、パーセンタイルでいうと99.9%以上との判定でした。言語にまつわる能力が高く、子供用のWISC-Ⅳではこれ以上は測定不可とのことでした。
記憶力に関しては、一度通った道は記憶されるようで、2歳4か月の頃、一度自転車でプールに行く際に通った道を、後日タクシーで通ったときに「ここプールのとこでしょ?」と言ってきたことがありました。見た映像が脳に残っており、再び通ったときにまたその記憶が蘇ってくるようで、「カメラアイ」ともいうようです。
小学生の頃、本人に聞いてみると全部景色が連続写真のように記憶されていくとのことでした。
また、ギフテッド児を動かす原動力になっている「好奇心」に関してですが、幼児期からとにかく色々なことに興味があり、やってみたい!と思ったら、なんでもやってみるタイプでした。興味関心の幅が非常に広いため、注意散漫のようにも見えますが、過集中モードに入ると、集中力や粘り強さには目を見張るものがあります。
学習面に関しては、一教えると十理解したり、運動面についても、縄跳び、鉄棒、自転車などもコツを掴むのが早く、習得に時間がかからないことも特徴的でした。
過度激動・過興奮性(OE)とは?5つのタイプを解説
次に、ギフテッド児に見られる共通特性の一つ、「激しさ」についてです。ギフテッドは並外れた激しさと繊細さを持ち合わせており、ギフテッド児のあらゆる根本に流れているのが突出した激しさといわれています。
この激しさは「過興奮性(Overexcitability/OE)」と呼ばれ、ポーランドの心理学者ドンブロフスキ(Kazimierz Dabrowski)が提唱した理論です。ドンブロフスキは、知的に優れた子どもは、感受性も高く、外的刺激に対して強く反応する傾向があると述べています。
過興奮性は以下の5つの領域に分けられ、ギフテッド児の特性を理解する上で非常に重要です。

感覚の過興奮性や精神運動の過興奮性のある子は、ADHDやASDなどの発達障害と誤診されることも多く、混同されやすい特性です。
過興奮性・過度激動・OEの特徴は、育てにくさを感じたり、周りとなんか違う気がする、と気づくきっかけになりやすい特徴でもあります。ここでは、一般的な特徴と、筆者の家庭で見られた実例を交えながら紹介します。
知的過興奮性
知的過興奮性のある子どもは、知的好奇心が非常に強く、探究心が深いのが特徴です。
ただ知りたいだけでなく、考察力・論理的思考力・問題解決力なども高く、「なぜ?」「どうして?」という質問を繰り返します。
また、道徳的な問題や社会の不公平さなどにも関心を持つことが多く、自分の考えを他者に理解されないとイライラすることもあります。
わが家の息子も、わからないことがあるとすぐに調べずにはいられません。
小学生の頃は本で、現在はスマートフォンでわからないことがあるとすぐ調べるそうです。「知らないことがない状態にしておきたい」とのことでした。
知識が体系的に脳内に蓄積され、必要な時にその知識にすぐにアクセスし、活用する姿はまさに知的過興奮性の表れといえます。
想像の過興奮性
豊かなイマジネーションと空想力を持つのが特徴です。ギフテッド児の4分の3は就学前に想像上の友達がいるそうです。物語を作ったり、空想上の友達と遊んだり、絵や詩で世界を表現することを好みます。
授業中に、物語を書いたり、空想の世界に没頭してしまうこともありますが、”think different”ができる能力として賞賛される資質とも言われます。
感情の過興奮性
親が最も気づきやすい特徴とされているのが「感情の過興奮性」とされています。感受性が強く、感情の起伏が大きいのが特徴で、人・場所・物に対して深い愛着を持ち、共感力に優れています。
感情の過興奮性がある人は、深い人間関係を築くといわれています。
一方で、周囲からは「大げさ」「過剰反応」と思われることも多く、感情的になりすぎて制御不能になったりすることも。
息子の場合も幼少期から現在に至るまで感情の波が激しく、なぜここまで怒るのか、悲しむのか理解できず悩んだ時期がありました。とにかく感情の振れ幅が大きいのが特徴です。小さい頃から現在に至るまで、「感情のコントロール」は課題の一つです。
しかし、本人が自分の特性を理解し受け入れることで、成長とともにある程度コントロールできるようになりました。

感覚の過興奮性
感覚の過興奮性がある子は、五感の感度が高く、感性がとても豊かです。日々の感覚や刺激をより増幅された形で受け取っています。音楽、言語、芸術、自然などのあらゆるものから強い感動を受け、深い喜びを感じます。
一方で、この敏感さにより、不快感を感じることもあります。
中には、衣服のタグ、教室の騒音、蛍光灯の点滅、音、匂いなどが気になってしまうことがあります。できるだけ不快な刺激を減らし、快適な環境を作りをするなどの工夫が必要です。
息子の場合は、そこまで神経質ではありませんが、五感が敏感なことよる「鋭い感性」の持ち主です。
5歳で虹を見て涙を流したり、絶景や音楽に心を動かされる場面が幼少期からよくみられました。
こうした感性の鋭さは、創造性や美的感受性の高さにつながっています。

精神運動の過興奮性
精神運動の過興奮性を持つ子は、身体的・精神的に常に活動的です。
身体的多動だけではなく、話すスピードが速い、考えが止まらない、頭が働いて夜眠れないといった精神的多動特性も見られます。
精神運動の過興奮性がある場合、緊張すると衝動的な言動が現れ、神経症的習癖や激しい衝動性、脅迫的行動が現れることもあります。この傾向はADHDと間違えられやすく、誤診されることもあります。実際には「思考の速さ」や「エネルギーの高さ」が背景にあります。
息子も幼少期は常に動いており、その多動さは一見落ち着きがないように見えますが、頭の中では常に新しい考えが動いている状態でした。
非同期発達(asynchronous development)

- 「非同期発達」とは?
-
「非同期発達」とは得意な能力をどんどん発達させ、他の能力との差ができてしまい、発達が同期していないように見えるというギフテッドの特性の一つです。
例としては、実年齢は小学生にも関わらず、知的能力は中学生レベル、情緒的には幼児レベル、といったことが挙げられます。
このような年齢と発達段階が一致しないというアンバランスさが「生きづらさ」や「育てにくさ」につながることもあります。
息子の場合はギフテッドによる非同期発達に加えASD(自閉症スペクトラム)の特性も重なり本当に理解不能な言動をしたりします。アスペルガー+ギフテッドの2Eの場合は極端な非同期発達を見せることがあり、それがさらに不可解で奇妙な行動に繋がるとされています。
また、ギフテッドにはIQの数値によって呼び名が違うのですが、プロファウンドリーギフテッドの場合はさらに大きな非同期発達が見られると言われています。

ギフテッドのランク・呼び方
IQ100が標準とされています。
| 知能指数 | 呼び方 |
|---|---|
| IQ115〜IQ129 | マイルドリーギフテッド |
| IQ130〜IQ144 | モデレートリーギフテッド |
| IQ145〜IQ159 | ハイリーギフテッド |
| IQ160〜IQ179 | エクセプショナリーギフテッド |
| IQ180以上 | プロファウンドリーギフテッド |
アインシュタインはIQテストは受けていないのではっきりとはわからないですが、IQ160〜190と言われているので、プロファウンドリーギフテッドに値することになります。
ギフテッドのタイプ
大きく分けると「英才型」と「2E型」に分けられます。

英才型…全体的高い知能を持つギフテッドのタイプです。学校生活でも特に問題もなく、学業成績も優秀なため、周りからも一目置かれる存在です。
2E型…高い才能や知能と障害を併せ持つ「二重に例外的な(Twice exceptional)2E」と呼ばれるタイプ。ギフテッドと発達障害を併発しているため、得意なことと苦手なことの差が激しい傾向があります。
「英才型」の場合は、周りから見ても「よくできる人」と明らかに見られることが多く、特に困りごともなく周囲が環境を整えやすく才能も伸ばしやすいようです。
「2E型」のギフテッドの苦手な部分は多様で、この苦手な部分がADHDやASDの症状と類似しているためギフテッドの部分が埋もれ発達障害と誤診されるケースも多くみられます。
息子は発達障害の診断はされていませんが、ASD(自閉症スペクトラム)の傾向がある2Eタイプと言われました。
これは経験上ですが、発達障害の診断名がつかなくとも、知能検査の結果に大きな凸凹が見られたり、発達障害の症状と同じような傾向が見られると2Eと言うようです。
医師曰く

高IQの場合、凸凹の低い部分も平均以上だったりする。
そうすると苦手な部分も高い知能でカバーしてしまうから
発達障害とは診断はしないことも。
また、1988年にGeorge Betts と Maureen Neihartによって「Profiles of the Gifted and Talented」という6つのパターンの図が作成されました。これは、ギフテッド児の感情、行動、ニーズを調べることで彼らをより理解するために作成されました。
以下をご覧いただくとわかるように、一口にギフテッドと言ってもタイプが様々で、その子に合った支援が必要となります。


発達障害との違い
ギフテッドの特性には、発達障害の特性と似た部分も多く、発達障害と誤診されることがありますが、ギフテッドと発達障害は別物です。
例えば、多動や衝動性などADHD(注意欠陥多動性障害)によく見られる症状ですが、ギフテッドの場合も同じような症状が見られることがあります。
発達障害が起因でその症状が起こっているのか、ギフテッドが起因でその症状が起こっているのかによって支援方法が異なるため、医師による慎重な判断が必要となります。
但し、先ほど挙げた「2E型」のように両方を持ち合わせているケースもあります。
発達障害であるADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)も、ギフテッド児も、社会性や学業面での困難を抱えることがあります。
その場合、心理士さんに言われたこととしては



2Eの場合は、発達障害の部分だけではなく、優れた才能、鋭い感覚などギフテッドの部分も両方の面を支援していく必要があります。


ギフテッドの生きづらさ
ギフテッドは、得意な分野では並外れた能力を持ちますが、何でもできる万能な人という意味ではありません。
これらのギフテッド特有の特性や、「過興奮症」「非同期発達」により、ギフテッド児は困り感や生きづらさを抱えていると言われます。
年齢によって困りごとは変化していきますが、何らかの生きづらさを感じているにも関わらず、適切な支援が受けられない場合、「二次障害」や「アンダーアチーバー」になる可能性もあります。
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ギフテッドの育て方
ギフテッドの育て方についてですが、「ギフテッドは才能だけ伸ばせば良い」という簡単なものではありません。
得意な部分だけではなく、苦手な部分(凸凹の凹)もケアしていく必要があります。
得意なことへの支援
- 強みを伸ばす
- 知的好奇心が満たされるような環境調整
- 機会を与える
+ プラス
苦手なことへの支援
- ソーシャルスキルが発達するような指導
- 周りが特性を理解する
- 長所を用いて弱点に対処する
(例えば視覚優位の場合、計画表など視覚的情報を与えるなど) - 合理的配慮
(例えば書字が困難な2Eの場合、パソコンを使う、口頭での発表の機会を多く設けるなど)


まとめ
ギフテッドの定義やよく見られる特徴をご紹介しました。特徴は共通してみられるとされていますが、必ずしも全員が全て当てはまるというわけではありません。
また、ギフテッドについては、詳しく下記の2冊の本に記されています。2冊ともギフテッドを知る上では必読の2冊だと思います。
とても詳しく説明されており、今のところこの2冊に勝る本はないのではないでしょうか。2冊ともとても分厚い本なので、読むにはなかなかの時間を要するかもしれません。
もし導入として知りたい、支援者としてギフテッドがどんな特徴があるのか知りたい、という場合は文庫本のこちらもおすすめの一冊です。
参考文献
『わが子がギフテッドかもしれないと思ったら 問題解決と飛躍のための実践的ガイド』(J.T.ウェブほか著 角谷詩織 訳 2019年 春秋社
「ギフティッド その誤診と重複診断: 心理・医療・教育の現場から
「Overexcitability and the Gifted」Sharon Lind
「A Definition of Giftedness that Guides Best Practice」NAGC
「TITLE 20-EDUCATION」Title IX of the Elementary and Secondary Education Act of 1965


