ギフテッドと言われたけれど、育てにくい。
いろいろ試してみてもうまくいかない。
「ギフテッド=天才」なんてとんでもない。学校では問題児扱いされたり、学校からしょっちゅう電話がかかってくる。そうかと思えば学校への行き渋りがみられたり。ホームスクーリングをしてみたけれど、ずっと一緒でしんどい…。
ギフテッド児を育てておられる方の中にはこんな悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私自身、ギフテッドという言葉とまだ出会う前の小学校2年生ごろから子育てに悩みを感じ始めました。その後、「ギフテッド」という言葉に出会い、特性などを理解しても育児の難しさは一向に解消しませんでした。思い返すと、小学校4、5年生の頃が一番大変な時期でした。
うちのギフテッド児、まだ7歳だけど…これからもっと大変になるの?
と思われた方。あくまでも成長には個人差があり、ギフテッドのタイプも様々です。(ギフテッドのタイプについては以下の記事をご参照ください。)
決して不安を煽るわけではありません。今回は、息子の5年生の頃の様子や特徴とともに、私自身の経験をもとに、現在ギフテッド児の育児が辛い、育てにくいと感じている方へ育て方のヒントをお伝えできたらと思います。
ギフテッドの育児はなぜ難しいのか
激しさ
ギフテッドの育児を困難にする理由の一つとして、「激しさ」があります。ギフテッドの特性の一つである過興奮性(OE)という特性で、感覚が過敏だったり、感情の振れ幅が大きいという特性です。
そこまで怒る必要ないよね?というようなこともすごい剣幕で腹を立てたり、人一倍感受性が豊かなため、喜怒哀楽を全面に表現します。感情のコントロールが苦手なことも頭を悩ませる原因でした。
ギフテッドの子は癇癪持ちと言われることもあるようですが、当時通っていた発達クリニックの医師によると
ギフテッド児は脳の発達がアンバランス故、そういう傾向がある子が多い。知的に高くても社会性が低かったり、ADHDのような症状があったり、攻撃的だったりそんな子ばっかり診てますよ。
とのことでした。
非同期発達
「非同期発達」とは得意な能力をどんどん発達させ、他の能力との差ができてしまい、発達が同期していないように見えるというギフテッドの特性の一つです。
1人の中に5歳から17歳くらいの幅があると考えるとわかりやすいかもしれません。
この特性が、側から見ると「理解できない行動」や「不可解な行動」に繋がることがあります。親から見てもなんでそんなことができないの?ということは日常茶飯事なので、学校や外では周りに理解されないということが出てきます。
社会性がゆっくり育つため、通常スムーズにいくことがうまくいかず、こっちがイライラしてしまうこともありました。時間通りに動けなかったり、取り掛かるのが遅かったり、朝から晩まで声掛けをしている時期もありました。
独自の視点で世の中を見ている
声掛けをしたからといってじゃあそうするか、とはならないのがギフテッド児。ギフテッド児は独自の視点で世の中を見ています。「常識」や「世間一般的に」といったことは通用しません。
また、自分の考えがあって行動しているので、こちらが何を言っても聞かないことがあります。
例えば自分にとって「重要ではない」とか「必要性を感じない」ことに関しては、やりなさいと言ったところでやりません。
口論が得意
そしてこれもギフテッド児には多い、言語能力が高いという特性。「言語能力が高い」というと聞こえはいいですが、こちらが何をいっても秒で言い返してきます。こちらの言うことなんて一切聞きません。生意気な口をきくので言い合いになることも頻繁にあり、こちらが疲弊してしまうほどでした。
言葉のチョイスは独特で、人を苛立たせる天才かと思うような言い回しで口撃してきます。
感覚過敏や感覚の鋭さ
ギフテッド児の中には、五感が敏感な子が多いのも特徴。感覚が鋭いゆえ、騒音に敏感だったり、触感が敏感だったりと、髪の毛や爪を切るのにも一苦労でした。一般的にスムーズにいくはずのことが、いちいち反抗、対抗してくるのでこちらももういいや、となることもしばしばありました。
ギフテッドとHSPは症状がとても似ているとされていますが、息子の場合は鈍麻の部分もあり、さらに複雑でした。
このようなギフテッド由来の特性があるにも関わらず、親が気づいていなかったり、理解していない場合はきっと育てにくさを感じることと思います。
これらに関しては心理士さんのアドバイスを記事にしておりますのでこちらもご参考に。
5年生の頃は、ギフテッドの特性も2Eの特性も理解していたのですが、今度はまた別の育てにくさにぶつかります。
5年生の様子・行動の特徴
もう反抗期?!お風呂、歯磨きなど生活の基本ができなくなる
息子が10歳、5年生の頃は我が家は主人の仕事の都合で海外駐在をしていました。
この頃の記憶は私ももうあやふやです。まだ数年前のことなので記憶に新しいはずなのですが、この頃は毎日何をやっても何をいってもダメで私自身、もう無気力すぎて正直あまり記憶がありません。
当時は、私が何を言ってももう何も伝わらないので、こちらももう何も言う気も失せているのですが、注意しなければしないでずっとYouTubeを見ていたり、一日◯時間というようにiPadの制限をかけると暴力を振るい…。
当時はコロナ禍と不自由な海外生活もあり、親への不満をあらゆる方法でぶつけていました。
こんな親で不幸だ、親のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ、と暴言を吐いてみたり、家にいる時は好き放題、言い放題でした。
私もかなり目を瞑っていたつもりですが、最低限のことである、お風呂に入る、歯磨きをする、と言ったことも毎晩毎晩言ってもやらず、ベッドでゴロゴロし続けてそのまま寝てしまいます。
服は脱いだら洗濯機、ご飯は下げる、上着はかけるなどと言った生活の基本のことも毎日言っても無視でやりません。一緒に生活している以上、片付けなどの必要性も伝えますが一切やりません。
学校はインターナショナルスクールに行っていたので日本に帰国後困らないよう漢字などは自分で学習しないといけなかったのですが、「漢字など俺には要らない」と言いやりません。
この頃からとにかくすべてに反抗するようになり、自分の気分が良くなることや楽しいことしかしなくなり、親の言うことには耳を傾けなくなりました。
当時、ギフテッド2Eにまつわる本が出版された時期で、熟読し、実際に試してみたりもしましたが、まのあたりにすると本当に何をやってもダメな時期でした。
「もう毎日毎日同じことの繰り返しで疲れてしまいました、、、」と当時のカウンセラーの方へのメールに書いていたように、本当に疲れて子供たちが学校に行っている間は一日中寝ているような日もよくありました。
独り言やチックのような症状が出る
この頃は2Eの部分の自閉スペクトラム症(ASD)の症状がとても強く出ていた頃でした。
息子ははっきりと発達障害に関する診断書は出されておらず、医師に聞いてもなんとなく「その傾向がある」という言われ方をします。
それでも、今までなかった身体症状が複数出始めます。具体的には独り言が止まらなかったり、独特の動きを、家にいる時はずっと繰り返していました。
頭の中の「バグ」のような感じで、どうしちゃったんだろうと思うこともよくありました。
常に頭の中が興奮しているような、常にエンジンがかかっているようなそんな感じでした。やめてと言っても止まらず、こっちがおかしくなりそうでした。
ゲームへ没頭
多方面に興味や関心があった息子がゲームかiPad漬けの日々になりました。長い日は一日7時間くらいトイレの時間も惜しんでやるように。
そのほかに関心のあることをあげるとすれば、釣りと工作のみで、ずっと暇そうにしていました。
親とルールを決めると、親子関係が悪化したため、カウンセラーの方と息子との間でルールを決めてもらっていました。その時のルールでは「ゲームは1日3時間」でした。
正直親としては「長っ!」と言う感覚でしたが、息子とカウンセラーの方と決めたルールなので口出しはできませんでした。
こんな長くて大丈夫ですか?と言うようなことを聞いたところ、
中毒の子は夜な夜なやっています、自分でゲームを止められる時間を決めて止めれたらそれでいいんです
とおっしゃっていました。
じゃあまあその通りにしてみよう、と思ったのですが、やっぱり3時間のルールも守れなくなり、また結局このやり方もうまくいきませんでした。
暇が良くないのではないか、とカウンセラーの方に言われ、毎日学校から帰ってからも習い事をいれて時間割で動けるように「やること」を作り、生活にメリハリをつけてみました。
しかし、これも本人がやりたいことではなければ、「やらされている」と本人が感じてしまうため結局その時間の前後は猛烈にゲームやiPadに没頭するようになりました。
のちに医師に言われたことですが、このタイプの子は依存しやすいので、ゲームは極力しないほうがいい、とのこと。
本人も当時を思い返すと異常だったと思うようで、その部分は納得していました。
ゲーム依存については別途こちらも参考に☟
習い事
習い事は、クラシックピアノ、JAZZピアノ、オンライン英会話ワールドトーク
幼稚園の頃から続けているピアノは相変わらず練習がつまらないと言いピアノには向かいませんでした。
一度は辞めたクラシック。ピアノのコンクール後も、全く弾こうとはしませんでしたが、数ヶ月経った頃、再開しようかなと言い、レッスンを再開しました。しかし行動が伴わず(全く練習せずレッスンの日を迎える)、先生に出された課題も無視してしまうようなこともありました。
先生とは3年のお付き合いなので、よく理解してくれているからこそとても心配してくださっていたのですが、息子の態度がひどすぎて、50分のレッスンが、ピアノのレッスンではなく、先生とのお話で終わることもありました。
人生どうしていくのか、こんな風に約束を破ったりしていてこのままでは社会では通用しない、など…先生が一生懸命お話をしてくださっている際もゲームをしながら聞いたり、寝そべって聞いたり、ごろごろ絨毯にくるまって聞いたり、本当に「どうしようもない人」でした。
先生が帰られた後、息子に先生の話を聞いてどう思ったか聞いたら、
イライラしてしょうがない。
ただの先生のくせに生意気だ、お金を払ってやってんのにそんなこと言われる筋合いない、親でもないのに偉そうだ。
とのこと。反省するどころか、苛立ちを感じていたことを知り、これはまずい。と危機感を感じました。
二次障害
ギフテッドの一般的な特性による育てにくさに加え、息子の10歳の頃のエピソードをいくつかご紹介しましたが、「ギフテッド」のいわゆる世の中のイメージとはかけ離れているものだったのではないでしょうか。
頭では息子のことは理解しているつもりでしたが、何をやっても悪循環。なにもうまくいきませんでした。
一番恐れていた、二次障害を起こしてしまっていたのです。
先述の、チックや独り言も、無気力になったり、ゲームを一日中し、お風呂も歯磨きもできなくなる…こういった行動も二次障害によるものでした。唯一インターナショナルスクールだけは息子にとっての居場所だったので、「何が何でも学校だけは行く!」という感じでしたが、家庭内もうまく回らなくない、いよいよ限界を感じてきます。
医療の介入の必要性
ここまでくると、素人の私があれこれやったところでもうどうにもなりません。
カウンセリングをオンラインで行った際も
環境を調整するほか選択肢はもうない。
一刻も早く日本に帰国して、医療の介入や専門的な機関にかかった方が良い。
とのこと。
当時、コロナ禍真っ只中ということもあり、そのストレスも多少は影響していたのも事実。
自分の意思ではなく父親の都合で連れてこられた海外駐在。最後までそこに不満があったようでした。
また、やりたいことも思うようにできない環境にもイライラ。
ついに母子で先に本帰国する意思を固めます。
最近読んだ本ですが、この本はとても参考になりました。発達特性のなかでも、自閉スペクトラム症タイプの子が「ストレス下で何が起こっているか」をわかりやすく説明し、親の対処法を説いてくれています。新型コロナウィルス感染症が蔓延したころに出版された本ですが、今読むとなるほどなあと思うことばかりでした。
ギフテッド児を育てていく上で一番大切なことは「環境調整」だと思います。
育てにくいと感じたら
とにかく早く対応をすることをおすすめします。上記に挙げたようなギフテッドの育児の難しさに加え、ギフテッドの場合はどこに相談していいかわからなかったり、相談機関がなくどうしても孤独な育児になりがちです。しかし、なんとかしようと思えば思うほど、反抗的になったり、衝突が起きたりいい方向には向かいません。
できるだけ早く、第三者を介入させ、対応することで二次障害は防ぐことができます。
相談機関に関しては、発達クリニックや、公的機関でも相談できます。親が相談できるのはもちろん、お子さん自身も悩みなどを相談できる機関がベストです。本人は気持ちをわかって欲しいというのがあるので、本人が信頼を置ける医師なり、心理士さんなりと出会うことで、気づいていくことがあります。
こじらせる前に、早めに心理士さんや発達クリニック、公的機関に相談することをおすすめします。
まとめ
きっとこちらのサイトに辿り着いてここまで読んでくださった方と「ギフテッド児の育てにくさ」は異なるかもしれません。
ギフテッドの特性はわかっていても1人ではどうにもならないこともあります。
ギフテッドも100人いれば100通り。目の前のお子さんに途方に暮れていらっしゃる方も、二次障害を起こしていないか、もし起こしていた場合は医師や専門家の介入をお勧めします。
二次障害を起こしていない場合も、環境調整をするだけで好転することもあります。
この後、本帰国後は、二次障害で起きていた症状は一切なくなりました。
それくらい環境が大事だと感じています。
ブログでは伝えきれていないことをnoteにて有料記事にて公開しています。今後も当サイトと分けて執筆予定です。