
理解が早いのに、行動がついてこない
どう関わったらいいの?どう育てたらよいの?
ギフテッドを育てていると、そんなアンバランスさに悩む親は少なくありません。
また、ギフテッドでありながら、発達障害や学習障害などの二次的な課題を併せ持つ「2E(Twice Exceptional)」の場合、さらなる育てにくさや、戸惑いに直面することがあります。
この記事では、ギフテッド・ギフテッド2Eの子どもが育てにくいと感じる理由と、その具体的な育て方について、私自身が育て方に行き詰まっていた際に、心理士さんにアドバイスをいただいた実体験をもとに詳しく解説します。


ギフテッドの子育ては大変?
実際に育てていて、はっきり申し上げて、本当に大変です。わが家は、発達特性を併せ持つ2Eタイプなのですが、朝から晩まで穏やかに終わる一日なんてここ数年ありませんでした。
書籍「わが子がギフテッドかもしれないと思ったら」の冒頭もこんな言葉から始まります。
ギフテッド児を育てるのは、まるでスリル満点な乗り物ばかりの遊園地で生活するかのようだ。ある時は微笑み、ある時は息をのむ。またあるときは叫び声をあげ、あるときは笑いころげる。あるときは驚きのあまり思わず見入ってしまい、またあるときはただ茫然と立ち尽くす。あるときは誇らしく思い、またあるときは気が狂いそうなほどにどうしようもない思いに、ただ泣くことしかできなくなる。
~キャロル・ストリップ&グレッチェン・ハーシュ
引用元 わが子がギフテッドかもしれないと思ったら 著ジェームス・T・ウェブ ジャネット・L・ゴア エドワード・R・アメンド アーリーン・R・デヴリーズ 訳角谷詩織
まさに数年間はこの描写通りの日々でした。
本当にこの表現の通り、「感情のジェットコースターのような毎日」なのです。
ギフテッドの子育てが大変なわけ
1. 感情の激しさと過興奮性
ギフテッド育児の難しさのひとつが、「感情の激しさ」です。
ギフテッドの多くに見られる「過興奮性(Overexcitability)」と呼ばれる特性で、感覚が鋭く、感情の振れ幅も非常に大きい傾向があります。
「そこまで怒る?」と思うようなことでも強い反応を示したり、人一倍感受性が豊かで涙もろかったりします。
息子もまさにそうで、感情のコントロールが難しく、私自身も日々試行錯誤の連続でした。
ギフテッドの子は癇癪持ちと言われることもあるようですが、当時通っていた発達クリニックの医師はこんなことをおっしゃっていました。



ギフテッド児は脳の発達がアンバランス故、そういう傾向がある子が多い。知的に高くても社会性が低かったり、ADHDのような症状があったり、攻撃的だったりそんな子ばっかり診てますよ。
2. 非同期発達によるアンバランス
ギフテッドの発達は「非同期発達」と呼ばれます。
つまり、得意分野の発達が非常に速い一方で、他の領域(社会性や生活スキルなど)が追いつかないのです。
1人の中に5歳から17歳くらいの幅があると考えるとわかりやすいかもしれません。
非同期発達という特性は、側から見ると「理解できない行動」や「不可解な行動」に見えることがあります。
「勉強はできるのに、なんでそんなこともできないの?」
そんな言葉をかけてしまう背景には、この非同期発達の存在があるのです。
このアンバランスさが、周囲との摩擦や誤解を生む原因となります。
3. 独自の視点とこだわりの強さ
自分の考えや視点を大切にするあまり、指示に従わなかったり、柔軟な対応が難しいことがあります。ギフテッド児は独自の視点で世の中を見ています。「常識」や「世間一般的に」といったことはなかなか通用しません。
また、自分の考えがあって行動しているので、こちらが何を言っても聞かないことがあります。
例えば自分にとって「重要ではない」とか「必要性を感じない」ことに関しては、やりなさいと言ったところでやりません。
なぜそれをしなければならないのかを頭で理解できないと反発したり、話し合いを求めたりします。
権威的な指示に従うのが苦手なため、家庭や学校で衝突が起きやすいことも育てにくさの一つです。
4. 言語能力が高いゆえに口論になりがち
WISC(知能検査)で「言語理解」が突出して高いタイプの子どもは、大人顔負けの議論を繰り広げます。
「言語理解が高い」というと聞こえはいいですが、理屈で反論し、屁理屈の天才のような言い回しをするため、親子間の衝突を招く原因になることも。
わが家の場合、息子の言葉のチョイスは独特で、あえて人を苛立たせるような言い回しで口撃してきます。重箱の隅をつついたような表現が得意でした。
5. 感覚過敏や感覚の鋭さ
ギフテッド児の中には、五感が敏感な子が多いのも特徴です。感覚が鋭いゆえ、音や光、触覚に敏感で、日常生活の中で不快感を感じやすいです。これが生活習慣の乱れやストレスの原因となることもあります。髪の毛や爪を切るのにも一苦労でした。
ちなみにギフテッドとHSPは症状がとても似ているとされていますが、別の概念だとされています。
育てにくさの本質
ギフテッド育児の本当の難しさは、「特性を頭で分かっていても、子を目の当たりにするとうまくいかない」ことだと思います。
知識として特性を理解しても、実際に目の前で強い感情や論理的な反発をぶつけられると、こちらも一人の人間です、冷静ではいられないこともあります。
また、「育児書に書いてある通りにやっても通じない」というこの現実に直面したとき、多くの親が「ではどうやって育てたらいいのだろう」と育てづらさに悩むのではないでしょうか。
ギフテッド2E育児のコツ
ギフテッド児の育て方は、「得意なことや才能を伸ばす」とよく言われますが、育てている側からすると「そんな簡単なものではない」というのが実際のところではないでしょうか。
ここからは、私が心理士さんや医師から実際に教わり、少しずつ取り入れてきた「ギフテッド2E育児のコツ」をまとめています。
「あ、こういう関わり方もあるんだ」と気持ちが軽くなるヒントになれば幸いです。
①「できる」と「できない」を切り離して考える
2Eの子は、理解力や語彙力など知的な面では年齢を超える一方で、生活面や行動面では幼く見えることがあります。
- 話す内容は大人びているのに、人の気持ちがわからない
- 難しい問題はすぐ解くのに、宿題に一向に取りかかれない
- 興味のあることは集中できるのに、興味がないと気が散る
- 整理整頓が著しくできない
できないのではなく、脳の処理の得意・不得意の差が大きいだけ。
「この子はこういうタイプ」と割り切ることが、育児をラクにする第一歩です。
②「得意」も「苦手」も両方ケアする
2E児を育てていると、できないことばかりに目が行きがちですが、できないことを必死に直そうとするのではなく、できることも伸ばしていくという、両方のケアが必要です。
ギフテッド児は「苦手なこと」で自信をなくしやすい反面、「得意分野」で爆発的に伸びます。
- 好きなことを深掘りできる時間を作る
- 興味のある分野で成功体験を積ませる
- 苦手な部分は、成長を待ちつつ支援を受ける
強みを伸ばすと、自己肯定感が上がり、苦手にも自然と取り組めるようになります。学校との連携も不可欠です。


③「感情の波」は共感で受け止める
2Eの子どもは感情の起伏が激しく、怒りの爆発が多いことも特徴の一つ。
そんな時、親が「なんでそこまで怒るの?」と返すと、火に油を注いでしまいます。
本人は自分のことを認めてほしいというのがあるので、感情そのものを否定してしまうのではなく、共感で受け止めるだけで、子どもの心は少しずつ落ち着きます。
心理士さんにも、本人と話をする時には、感情は使わないようにする、感情論は意味がないと言われました。
第一に 寄り添う、共感、気持ちを理解する。
第二に 言語理解が高いという特性を生かし、言葉で論理的に具体的になぜダメかを伝える。
第三に ルールを決めて話し合う、そして最後に他人がどう思ったか相手の気持ちを伝える。
④メタ認知能力を高める
それでもうまくいかず、感情的になってしまった場合は、時間が経って落ち着いたときに、自分の感情を振り返る練習をしていきます。
このイライラは〇点、このイライラは〇点と点数化することで自分の感情に気づき、メタ認知能力を高めていきます。メタ認知を高めることで、自分自身を客観的に見つめることができ、少しずつ感情をコントロールできるようになります。
自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え評価した上で制御することである。「認知を認知する」 (cognition about cognition) 、あるいは「知っていることを知っている」(knowing about knowing) ことを意味する。またそれを行う心理的な能力をメタ認知能力という
引用元 Wikipedia
⑤「社会性」は合わせるより居場所を探す
ギフテッド児は独自の視点で社会を捉えています。2E児の中には、集団行動が苦手な子も少なくありません。
「みんなに合わせる練習」よりも、「自分らしくいられる場所」を確保する方が大切です。
- 習い事
- オンラインでの学びコミュニティ
- フリースクールや図書館などの居場所
みんなと同じを目指さなくてもいい。
安全に自分を出せる環境こそ、社会性の第一歩です。
⑥ 一人でも多くの理解者を作る
ギフテッドは50人に1人、人口の約2%〜5%とされています。ギフテッド自体がマイナーとされているため、なかなか周りに受け入れられず本人が葛藤しており、その反応として二次障害を起こすこともあります。
まずは周りの大人が特性を理解することが大切です。「人の気持ちがわからない」という悩みを心理士さんに相談した際に、ギフテッド児は、自身の気持ちを受け止めてもらうことで、段々相手の気持ちがわかるようになってくると言われました。
その子自身が、誰もわかってくれない、という不満やストレスがあるのに、人の気持ちなんてわかるはずがありません。社会性を身につけていく上でも、一人でも多くの理解者を作ることがよいとのことでした。
⑦「親のケア」も育児のうち
2Eの子を育てる親は、想像以上にエネルギーを消耗します。
理解されない孤独、終わりの見えない心配、対応への疲労……。
でも、親が倒れたらサポートは続きません。
- 休む
- 頼る
- 共感してもらう
この3つは「甘え」ではなく、2E育児の戦略です。
クリニックなど相談できる機関とつながるだけでも、心が軽くなります。
⑧ 理想論はひとまず捨てる
ギフテッド2Eの子育ては、長距離マラソンのようなもの。
理想を求めすぎると、親子ともに疲れてしまいます。
宿題が終わらなくても、感情が爆発しても、1日を無事に終えられたら、それで十分。
焦らず、その子のペースの成長を待つことも支援だと思います。
完璧じゃなくていい。親が笑顔でいることが、最大の支援です。
育て方に困った時、行き詰まった時に読んでほしい本
今まで周りより成長が早かったり、物分かりが良かったお子さんが、急に学校に行きたくないと言ったり、不適応症状が出ると親としてはどうしたものかとオロオロしてしまうのは当然のことだと思います。
そんな時にぜひ読んでほしい応援本を2冊ご紹介します。
たくさん読んだ本の中でも下記の2冊は明るいタッチでわかりやすく書かれています。
まとめ 育てにくいと感じたら、早めの対応を
ギフテッド2E児の育児は孤独です。
誰にも相談できず、親が抱え込みやすいのが現実。「どうしてもうまくいかない」と感じたときは、すぐに動くことが二次障害などを防ぐ第一歩です。
このタイプの子は、とにかく母親一人では育てられません。
どうか一人で抱えず、心理士さん、カウンセラー、発達クリニック、公的機関など使えるものはぜひ利用するのをお勧めします。
アメリカの研究で、ギフテッドの行動特性、感情などを6つに分析し、それぞれタイプ別に支援方法が提示されていいます。ギフテッドと言ってもその子その子に合った支援は異なります。是非参考にして見てください。


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