- ギフテッド児の癇癪、暴力、暴言を止めるには?
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ギフテッドの激しさは、癇癪、暴言、暴力などの問題行動として現れることもあります。まずは何が原因で起こっているのか探る必要があります。止める方法は一つではありません。また、問題行動が見られる場合は、長期的に向かい合う必要があります。
始める前にあらかじめお伝えしておきたいことがあります。
現在の息子及び家庭内の様子ですが、家庭内暴力は全くなくなりました。ゼロです。ここまで約2年かかりました。渦中にいる時は日々絶望でした。できることはしたと思います。本も大量に読みました。たくさん涙もしました。
今まさに渦中にいる方にこんなやりかたもあるんだなと、少しでも参考になれば幸いです。今、必死でもがいている方に届きますように。

暴力はなくなります!今同じように悩んでおられる方も、解決できるんだということ。そして時間はかかるかもしれませんが、いつまでもこの状況が続くわけではないんだ、ということをおわかりいただけたらと思います。
こちらの「ギフテッド児のお悩み別Q&A」のカテゴリーでは、実体験に基づいた筆者なりの考えをまとめています。
今まで、数々の医療機関・専門機関を受診して受けたアドバイスや、専門書に基づいて実際にやってみてうまくいったこと、いかなかったことについて記載しています。
ギフテッド児もさまざまなタイプがいるため、その子によっては効果がない場合もございます。その旨ご理解の上、参考にしていただければ幸いです。
ギフテッド2E児の暴力・癇癪はなぜ起きる?
ギフテッド2E(twice-exceptional)児は、高い知的能力と発達障害(ASDやADHDなど)を併せ持つ子どもを指します。彼らは非常に繊細で、感受性が強く、感情のコントロールが難しい傾向があります。そのため、癇癪、暴言、暴力といった問題行動として現れることがあります。
子どもから暴力や暴言を受けるのは、親として非常につらい体験です。「育て方が悪かったのか」と自分を責めてしまう方もいますが、ギフテッド2E児の問題行動は育て方だけで説明できるものではありません。
わが家の問題行動の原因に関しては、ある程度落ち着いた今だからこそわかることも多々あります。原因はそれぞれお子さんによって異なると思いますが、わが家の場合は以下のようなことが原因でした。
- 環境が合わない(学校や家庭のストレス)
- エネルギーの発散先がない
- 感情のコントロールが未発達
- 「わかってもらえない」ことへの絶望感
- 思春期ホルモン
またギフテッド児は繊細な面があり、不適切な環境にさらされ続けると反抗挑発症や、うつ症状などの二次障害が出たりすることがあります。
そして当然、ギフテッドだからみんながみんな暴力的というわけでは決してありません。書籍「ギフティッド その誤診と重複診断: 心理・医療・教育の現場から」の中にこんな一文があります。
幸いなことに、抱えている怒りが激しいにも関わらず、ギフテッド児や成人ギフテッドが暴力的になることは多くはない(Cross,2004)
引用元 ギフティッド その誤診と重複診断: 心理・医療・教育の現場から


【体験談】止まらぬ暴言と暴力
わが家の場合、あくまでも閉鎖的な家庭内でのみ現れ、決して外で友達や先生にそのような態度をとることはありませんでした。
どうしようもない苛立ちやフラストレーションを自分より力の弱い者へ向け、何かを訴えているような、親への甘えにも見れるような、そんな感じでした。
この頃、もう家族として機能はしていなかったと思います。みんながそれぞれ限界で相手を思いやるような言動はできなくなっていました。
いつも家族のバランスを取ろうと気を遣ってくれる妹も体調不良を訴えるようになったり、学校の行きしぶり、食欲不振などが出てきました。お弁当も一口も食べずに帰ってきたり、保健室に通うようになりました。当時かかっていたカウンセラーの方に、妹のことが心配だと言われるくらいの状況でした。そんな娘の様子を主人に伝えても、心配するどころか、自分が思い通りに仕事ができないことに苛立ちさえ感じているようでした。
今すぐ適切な支援なりカウンセリングを受けなければ、悪化の一途だと思い、会社の辞令を待たず母子で帰国することを決めます。
【実践策】暴力・癇癪を止める7つの方法
1. 安全な空間を確保する
暴力が起きたときは、まず「安全確保」が最優先です。親が無理に止めようとせず、鍵付きの部屋などに一時避難するのも有効です。
- 怒りのピーク時は話しかけても逆効果
- 「刺激を減らす」ことが鎮静の第一歩
- 身体的被害を避けることが最優先
2. 本人が「手が出そうになった時」にする行動を決めておく
感情が爆発しそうになったときのクールダウン法を本人と一緒に決めておくと、事前のブレーキになります。
- 怒りのレベルを数値化(アンガースケール)
- 深呼吸やスクイーズボールで感覚を切り替える
- 静かな場所に行って1人で落ち着くルールを作る
興奮していているときに、切り替えるのはなかなか難しいのですが、いくつか自分の中で冷静になる方法をもっておくことは有効です。これらの方法は「アンガーマネジメント」としても本に載っている方法です。
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3. 環境調整で「暴力の原因」から遠ざける
わが家で最も効果があったのは日環境を変えることでした。その場でもがくよりも、日本に帰国し、少しでも本人の負担やストレスのかかる環境を回避するだけで劇的に変化しました。
- 学校環境が合わないなら転校や通級も選択肢
- 家庭のストレス源を排除(兄弟関係・習い事など)
- 本人が「自分らしく過ごせる」時間を増やす
4. 問題行動につながる「トリガー」を特定・回避
子どもが暴力に至る前に、「前兆」が見えることも多いです。
例えば、わが家の場合、以下のようなトリガーが考えられます。
- 宿題に取り組もうとしないので注意をされる
- 他人に否定されると過剰反応を起こす
- やりたいことが多すぎてやるべきことが後回しになる
- 時間通りに動けず注意をされる
これらのトリガーを予測・回避することで未然に防げることがあります。当時とにかく遊びも習い事も勉強もやりたいことが多すぎて、優先順位がつけられなかったり、基本的な生活のやるべきこと(お風呂や睡眠)が後回しになり注意されることで暴力につながることが多くみられました。
病院の医師からは、暴力も情熱としたうえで、我が家の場合はこの流れを止めるためには、「やるべきことを絞らないといけない」というようなことを言われました。



まず、1番大事なことは生きていくこと、体をつくること。
睡眠や食事といったこと。
2番目は公的なこと。学校とか宿題とか。
一つのことにのめりこんでいくタイプなので、こういう人は、時間管理はできない人。底をみないと気が済まないから時間は足りなくなる。
とはいえ、大人を巻き込んだときは大人の社会のルールを守らないといけない。
11歳になると自分のことを自分で考えてできるようになる。
もうそろそろ絞って、どうしてもやりたいことを残していくのが11歳。
そして3番めに時間的な余裕があれば遊びや好きなこと。
人の頭はあっち行ったりこっち行ったりするので、順番をつけていくと良い。
当時は半信半疑でしたが、本当に11歳を越えたあたりから、やりたいことを絞ることで、やらなければならないことに時間が回せるようになりました。
すると、こちらも声をかける頻度が減り、結果的にこの暴言・暴力のサイクルが減っていきました。


5. 第三者(専門機関)を介入させる
家庭内暴力の場合、家庭内という閉鎖的な空間で起こり、なかなか周囲に相談しにくいかもしれません。しかし、エスカレートする前にできるだけ早めに外部に助けを求めることで最小限に抑えられるかもしれません。
家庭内だけで抱え込むのは限界があります。発達支援センターやスクールカウンセラー、医療機関など、信頼できる専門家の手を借りてください。
6. 投薬治療を検討する(医師と相談)
医師によっては、ADHDや不安症などへの薬物療法を提案されることもあります。副作用もあるため慎重な判断が必要ですが、有効な場合もあります。



凸凹があるからそうなる。
こういう子たちは自分の常識と社会の常識が違う。
多面的に見て共通項を見るのが苦手なので、あなたはこうしたら得ですよ、と理解させ、役割を与えて社会性を身につけていくのが良い。
衝動的な部分を抑えるために投薬をしてはどうか?
実際にこう言われ、一時的にインチュニブを処方されました。ADHD(注意欠陥多動性障害)の薬?と思われるかもしれません。私もASD(自閉スペクトラム症)ではないの?と思い医師に聞いたところ、



ADHDではないが、同じ症状(衝動性)があるので、その薬でその症状を抑える。
すぐ情動的、感情的になってしまう衝動性を改善していくことで、物事の見通しを立てられるようにし、感情のコントロールができるようにしていく。
とのことでした。ギフテッドの場合は、成長し自分で考えられるようになってくると薬は必要なくなっていくとのこと。わが家は受験期の半年間だけ処方していただき、今は飲んでいません。
投薬に関しては、ギフテッド児が発達障害と誤診され投薬されてしまうというようなことも知っていましたが、その先生はギフテッドの特性も踏まえた上で処方してくださっています。
7. 「暴力はなくなる」と信じて継続する
何よりも大切なのは、「今の状況が一生続くわけではない」と信じることです。実際に筆者も、絶望の中で本を読み、試行錯誤し、周囲に助けを求めながら乗り越えてきました。
もう一つの原因?思春期早発症
これは後々分かったことなのですが、思春期の性ホルモンのせいでもあることがわかりました。
男児は平均的に12歳ごろから二次性徴と呼ばれる体の変化が始まるのですが、息子の場合は約2年早く思春期が来ていました。
検査をしたのは11歳でしたが、ホルモン値を調べたところもうこの時点(10歳)ですでに思春期を迎えていることがわかりました。思春期が2年早いこと、骨年齢などから思春期早発症との診断でした。
今まで色んな発達障害、反抗挑発症など色々な診断名を疑ってきましたが、ある意味これが息子に付いた初めての診断名でした。
思春期の時期は性ホルモンの影響で、体だけではなく心も大きな変化が生まれます。反抗期は自我が芽生え、自立をはじめ親離れをしたがる時期のことです。この頃の衝動性は思春期特有の行動とも重なるため、これも要因としてはあるのではないかなと思っています。
当時、思春期がこんな早く来るとは思っておらず、分かってあげられることができませんでした。当時少しでもわかっていたら違ったかもしれません。
ギフテッドは早熟だと言われることがあります。思春期早発症に関しては、精神的に大人びていたり、早く大人になりたいという気持ちが強いためそうなるのか、疑問だったため成長クリニック、発達クリニック、双方の医師に関係があるかどうか聞いたところ、ギフテッドがみんな思春期早発症なわけではない。思春期早発症は環境要因として夜更かしと肥満、あとは遺伝が大きいとのことでした。
まとめ
以上、我が家が取り組んだ対応策です。なんでこんなに激しいのかと日々周りの大人は疲弊していることと思います。思春期特有の反抗期も重なっている場合、そのエネルギーは凄まじいものだとお察しします。
しかし、もしかしたら本人もどうしようもない行き場のない思いを暴言として表しているのかもしれません。
本人の思いを聞き、必要であれば医療の介入をすることにより時間はかかるかもしれませんが、一つずつ対処していけばいずれおさまる日は来ます。
決して我慢したり耐えて受けるのではなく、暴力は絶対にダメなことであるというのを前提に対応していくことが大切です。
最後に、ギフテッド児といってもタイプは様々です。我が家の場合は外へ外へ不満を爆発させるタイプでしたが、内へ引きこもってしまうケースもあります。必ずしもギフテッドみんながこのようなタイプとは限らない旨ご理解ください。