同時処理と継次処理どっち? 聴覚優位のギフテッドの学習に活かす

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継次処理か同時処理か

認知特性の「視覚優位」「聴覚優位」「言語優位」について以前ご紹介しました。今回はその続編、情報を処理する方法の違いについてです。

情報処理の仕方には「同時処理」「継次処理(読み方:けいじしょり)」の二つのタイプがあるとされています。

どちらのタイプかによって思考スタイルや学習スタイルも異なるとされています。発達特性があったり、ギフテッド2Eの場合は、どちらかに偏っていることもあり、この特性を知ることも支援の一つとなります。

目次

処理の特性とは

入ってきた情報を認知し、処理する方法は、人によってそれぞれ異なり、自分の得意な方法で情報を処理をしているとされています。

発達障害の中には同じ診断名の場合でも認知特性が異なるため、教育現場では指導方法や子どもたちの理解に混乱が生じているとされています。

つまり「ADHD/ASDだから〇〇優位」というように発達特性だけでは優位性を知ることはできません。この認知の違いは、学習方法だけではなく、職業やコミュニケーションなどにも関わってきます。

認知の仕方

情報を認知する手段を「視覚」「聴覚」「言語」「体感覚」と分類しています。

視覚優位視覚からの情報収集、理解をするのが得意
聴覚優位聴覚からの情報収集、理解するのが得意
言語優位文字からの情報収集、理解するのが得意
体感覚優位体感することからの情報の収集、理解するのが得意

認知特性に関しては、書籍で簡易的に自分自身でチェックすることもできます。Kindle Unlimitedでは無料で読むことができるので気になる方はこちら☟

子どもの認知特性を知りたい場合はこちら☟ 質問内容は、3歳くらいを目安にしています。

次に、脳の情報を処理する手段を「同時処理」と「継次処理」に分類しています。

同時処理物事の全体をイメージしてから、情報と情報の関係を把握していくことを得意とする
継次処理情報を一つ一つ順番に理解してから、それらを繋いで全体を捉えていくことを得意とする

人は、二つの認知処理のスタイルのうち、得意な処理方法を使って情報を処理しています。得意な認知処理方法ではない指導法の場合、理解しづらいと言うことが起こります。

つまり、同時処理が得意な場合、「全体から部分へ」、継次処理が得意な場合は、「連続的、段階的、順番に」という方法で学んでいく方が理解しやすいということになります。

認知処理のスタイルを知る方法

これらの認知処理を知る方法は、WISC(ウェクスラー式知能検査)や1983年にカウフマン博士夫妻によって開発された「K-ABC」、改訂版KABC-Ⅱという検査によって知ることができます。

検査をするとなると費用も時間もかかるので大変ですが、下記の本には、簡易的なチェック方法が載っています。

まず子どもの認知処理スタイルをチェックする前に、保護者や先生自身の認知スタイルを把握することが大切だとしています。教える側と、子どもとの認知処理の仕方が異なる場合、子どもに合わせた指導方法を行うことが、つまずきを解消することにつながります。

先生、保護者用のチェックリストも掲載してあります☟

注意点として、認知特性は、極端にどちらかに優位性が偏っている場合もあれば、複数の手段の優位性がある場合、どちらも優位性がないという場合もあります。私自身、あまり差のないタイプでした。

また、認知処理に関しては、日本K-ABCアセスメント学会副理事長熊谷恵子筑波大学人間系教授及び、元全国情緒障害教育研究会会長 砥抦敬三帝京大学教職大学院教授の指導の下、「分かり方の特性」チェックリストというものが開発されました。以下に引用させていただきます。

同時処理か継次処理 チェックリスト

同時処理能力に優位継次処理能力に優位
何をするのかを説明しなくても、周囲の友達の様子や雰囲気を見て、動くことが できる。次は何をするのかなどを順番に説明すると動くことができる。
学習教材の内容が全体的に提示された時、集中して学習している。学習教材の内容が部分ごとに順序良く提示された時、集中して学習している。
絵本や本などを読むときに、絵を手掛かりに内容を把握しようとしている。絵本や本などを読むときに、文を手掛かりに内容を把握しようとしている。
物事などの説明をさせると内容の大体を話すことが多い。物事などの説明をさせると、場面の経過に沿って話すことが多い。
完成図や完成品などがあると、集中して取り組める。説明書やマニュアルなどがあると、集中して取り組める。
状況などを説明するときに、「ダーっと言って」のような擬態語などで雰囲気を 伝えようとすることが多い。状況などを説明するときに、具体的な名称や言葉で説明することが多い。
ペーパーテストや問題集の問題を、全体を見て、できそうな問題から解いている。ペーパーテストや問題集の問題を、順番に解いている。
図表や絵などを見て覚えるのが得意で ある。声に出して覚えるのが得意である。
計算するときに、途中の式を書かずに解いている。計算するときに、途中の式を書いて解いている。
図表を読むことが得意である。図表を読むことが苦手である。
工作などでは、大まかな形から作り始め ることが多い。工作などでは、パーツや部分に注目して、作り始めることが多い。
引用元 児童・生徒の得意な処理能力の傾向を知るための簡易チェックリスト

一般的に、認知特性が言語優位・聴覚優位の場合は、継次処理を行うことが多く、視覚優位は同時処理を行う人が多いそうです。

よく例えられるのが、地図の見方。

地図を見るだけで道順を覚えられたり、地図を見て目的地に向かう方がわかりやすい場合は同時処理だと言われています。

一方、ナビの音声を聞きながら目的地に向かったり、行き方が書かれたメモを読みながら目的地に向かう方がわかりやすいのが継次処理と言われています。

こちらの本はそれぞれの違いや特徴がとても分かりやすく書かれています。☟

「同時処理」に向いている勉強法

同時処理と継次処理

「同時処理」タイプは、全体的に大まかに認識し、その後で部分を繋げて処理します。

そのため、図や絵を使って全体を把握させてから細部へと移行する方法が効果的です。上記のイラストだと右側が同時処理向きの指導となります。

また、視覚的、空間的な捉え方が得意であるため、算数や理科などは解き方がまとめられている図表を使うことが有効です。

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語学も、「何度も音読をする」「何度も声に出してみる」というような学習方法よりも、全体的にイラストやイメージ図など多くの情報を得て、頭の中にその子なりの新しい映像が生まれることで理解していきます。

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「継次処理」に向いている勉強法

このタイプの学習方法は、情報や課題を順序立てて、情報を処理していくタイプで、論理的に推論したり、分析的思考が得意とされています。

指導は、イラストの左側のように、段階的な指導が効果的で、部分から全体へ広げていく指導方法の方が理解しやすいようです。

また、聴覚的、言語的な手がかりを使った学習方法も効果的です。掛け算は「いんいちがいち、いんにがに・・・」と口に出して覚えた方が理解しやすいとされています。

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聴覚優位のギフテッド2E児の場合

息子は、以前の記事でもご紹介しましたが聴覚優位の中でもサウンドタイプです。聴覚優位のタイプは、「継次処理が多いとされています。

この聴覚優位、継次処理能力優位の特性両方を活かして学習をするのが一番効率的だということになります。

聴覚優位の場合、学校は講義型で進んでいくため学校の授業は有利だとされています。
しかし、不得意な部分はあるにも関わらずなかなか苦手な部分が見えにくく、特性を周りが理解していないと「なんでわからないの?」と思われてしまうことも。

実際に、息子の得意・不得意を挙げながら「継次処理」と「聴覚優位」を活かした学習方法を考えてみようと思います。(あくまでも息子の場合となります。)

立体図が苦手

カメラアイの能力があるため、息子は平面的に捉えたり、写真のように二次元で捉えるのは得意です。一方、立体を捉えることがとても苦手です。

立体を捉えるには、奥行きをとらえなければならないのですが、奥行き感を捉えるのが苦手です。
話がちょっと飛びますが、行動面でも、机との距離感がわからずぶつかったり、物を落としたりすることも多いです。中学生になっても食べこぼしがひどいのはおそらくこの特性のせいかなと思っています。

中学受験にも立体図は取り扱われますが、最初は立体図に見えず、解くことができませんでした。解法の前に、立体に見えないのです。
立体図を立体的に見るために工夫したことは、実際に立体を手に取って図と照らし合わせることでイメージをつかんでいきました。線で書かれているここがここに値する、この面がここ、というように紙に書かれている立体を実物に照らし合わせながら考えていきました。

展開図を頭の中で立体図にすることもとても苦手でしたが、実際に展開図を書いて切り貼りして、立体にしていくところから始めました。

このように、スモールステップで段階的にクリアをしていきながら問題に取り組むようにすることでだんだん解けるようになりました。

視覚情報が多いと何が大事かわからない

目からの情報が多すぎると、何が大切かわからず、整理ができないということがありました。このタイプは、一度にたくさんの情報を目に入れるより、順序だって簡潔に説明されているものの方が理解しやすいという特性があります。

①、②、③とやるべきことが整理されているシンプルな教材をメインで使うようにしていました。低学年のうちはドラゼミ(元)を使用していました。

また、WISCの検査をした小学校中学年ごろ勧められたのは「ビジョントレーニング」でした。ビジョントレーニングをすることで、目でものを捉える力を訓練することができます。

ビジョントレーニングをすることで得られる効果としては、焦点をあわせられるようになったり、動体視力アップ、立体視能力、奥行き認知能力が高まるとされています。

小学校中学年くらいの頃に日常生活に取り入れていましたが、先ほどの立体図の問題にも多少効果があったかもしれません。

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聴覚を活かす学習方法

ここまで苦手なことについての学習方法を見てきましたが、継次処理能力が高く聴覚優位の場合は、聞いて理解する力を生かした学習方法が効果的です。

講義型の動画を見たり、リスニング教材を使った学習が効果的です。我が家は、集団塾が苦手だったため、と個別指導塾にお世話になりました。

は講義型の授業スタイルなので、息子には合っていたと思います。

また耳からの情報処理が得意なので、まだ息子自身は利用していませんが、を利用も良いかもしれません。

まとめ

以上、認知処理についてご紹介しました。

このように、思考スタイルが人によって異なるため、一般的に「効果的な学習方法」と言われていたり、「話題の教材!」と言っても全員にとって効果があるわけではありません。むしろその子にとって、効果があるどころか苦痛な学習方法かもしれません。

また、2024年4月から、すべての事業者へ合理的配慮が義務付けられました。得意な認知処理方法を知っていれば、学校や塾へ合理的配慮をお願いすることもできます。

得意なこと、苦手なことなど特性を見極めて、その子に合った学習教材や学習方法を見つけることも支援の一つではないでしょうか。

参照
東京都教育委員会HP
ギフテッド 天才の育て方 (ヒューマンケアブックス) 
「継次処理」と「同時処理」 学び方の2つのタイプ: 認知処理スタイルを生かして得意な学び方を身につける   

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