「うちの子、絵で説明するとすごく理解する」
「聞くとすぐ覚えるけど、文字は苦手かも…」
「ひたすら書く事で覚えられる」
それは「視覚優位」「聴覚優位」といった「認知特性」の影響かもしれません。この他に「言語優位」「体感覚優位」の主に4つがあるとされています。

ASD(自閉症スペクトラム)は視覚優位が多いと聞くけれどうちの子はどっちかわからない
これは実際に育てていて私自身が感じたことなのですが、息子は検査により、発達障害の診断名は付かないものの、ASD傾向があると言われていました。支援方法を調べていく中で、ASDの場合は「視覚優位」が多いという記事をよく目にします。
ただ、生活を見ているとどうも聴覚優位な部分が多いのでどっちの支援をしたら良いのだろうと思っていました。
今回の「認知特性」についてお子さんがどちらの傾向があるかを知ることで、支援につながる可能性があります。
認知特性とは
認知特性とは、見る・聞く・読むといったインプットと、それを理解・整理・記憶する処理、そしてそれらをもとに書いたり話したり表現するまでの、一連の方法と、人によって異なるその偏りのことを言います
引用元 本田式認知特性研究所
人には、情報の「受け取りやすさ」に個人差があります。これを「認知特性」と呼びます。
認知特性はある程度、生まれ持ったものもありますが、その人を取り巻く社会環境によって認知機能は変化する可能性があるとされています。主な認知特性は以下のとおりです。
視覚優位:目から入ってくる情報の方が処理するのが得意
聴覚優位:耳から入ってくる情報の方が処理するのが得意
言語優位:読んだ情報を処理するのが得意
体感覚優位:触感や動きを通じて情報を処理するのが得意
ASDと視覚優位の関係
認知特性を知ることで、効率よく学習できたり、コミュニケーションがスムーズにいくことがあります。
しかし、ASDやADHDなどの発達障害の診断名だけでは、子どもの認知特性を正確に把握することはできません。
自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けている子どもに対して、「ASD=視覚優位」といった一括りの理解で指導してしまうと、実際の認知スタイルに合わない支援となり、かえって学びにくさを引き起こしてしまうことがあります。
これが私自身も戸惑った原因でもあるのですが、自閉症スペクトラム(ASD)だからと言って必ずしも「視覚優位」とは限らないため注意が必要です。
視覚優位と聴覚優位の割合は
視覚優位・聴覚優位・言語優位といった認知特性(情報処理スタイル)の割合に関する研究やデータは、日本では一部の研究者や教育機関によって行われてはいますが、全国的な統計データはまだ十分に整備されていないのが現状です。一般的には視覚優位が最多と言われており、次いで聴覚優位、少数派として言語・体感型があると言われています。
国外でも研究はされているようですが、学習スタイルの分布が文化や教育環境によって異なる可能性もあるため、一概に何割ということは難しいと思われます。
視覚優位とは


視覚優位の2つのタイプ
視覚優位の中でも細かく分けると2つのタイプがあると言われています。そのため同じ視覚優位でも、得意なことは異なるとされています。
- 視覚優位:写真(カメラアイ)タイプ
写真のように、2次元で捉え思考するタイプ
アニメの脇役のキャラクターの似顔絵も描ける - 視覚優位:3次元タイプ
空間や時間軸を使って考えるタイプ
映像として物事を記憶する
視覚優位タイプの特徴
・図や映像での説明が得意
・イメージで記憶する傾向がある
・地図やチャートが理解しやすい
・黒板やノートを「見るだけ」で覚えることが多い
勉強方法・学習支援
おすすめ教材
色や形を捉えることが得意なので漢字の覚え方もへんとつくりのパーツで分かれたパズルなどを使うのも良いとされています。
通信教育を使用する場合は、カラフルな色使いとキャラクターが登場する「進研ゼミ小学講座」
また、共通の視覚優位の支援の方法として、視界に余計ななものが入らないように環境を整えることも一つです。
なぜ「視覚優位=天才」と言われることがあるのか?
結論からいうと視覚優位だから「天才」というわけではありませんが、視覚優位の特性を活かすことで天才的な力を発揮することがあります。視覚優位の人は、空間認識・記憶・情報整理など、特定の分野でとても高い能力を持つことがあります。
- 写真のような記憶力(フォトグラフィック・メモリー)
- 複雑な図や構造をすぐに理解・再現できる
- 頭の中で立体的に物事をイメージできる
- 全体像を捉えるスピードが速い
こうした力が芸術、設計、数学、科学などに結びつくと、いわゆる「天才型」に見えるではないでしょうか。以下の人物たちは、視覚的思考が非常に強かったことで知られています。
名前 | 分野 | 特徴 |
---|---|---|
アインシュタイン | 理論物理 | 言語より「頭の中のイメージ」で思考していたと本人も語る |
レオナルド・ダ・ヴィンチ | 芸術・科学 | 解剖学スケッチ、発明設計図など視覚情報に優れていた |
テンプル・グランディン | 動物行動学者 | 自閉スペクトラム&視覚思考の第一人者。「私は写真で考える」と著書で表現 |
聴覚優位とは


聴覚優位の2つのタイプ
聴覚優位の2タイプはこちら。
- 聴覚優位:聴覚言語(ラジオタイプ)
文字や文章を「音」として耳から入れ情報処理するタイプ
英単語を覚えるときは何度も聞いたり暗唱をして覚える - 聴覚優位:聴覚&音(サウンドタイプ)
音色や音階といった音楽的イメージを理解・処理できるタイプ
絶対音感がある
聴覚優位タイプの特徴
・一度聞いたCMや歌詞を覚えるのが得意
・ダジャレが得意
・難しい話題も話を一度聞けば理解できる
・口頭の指示がわかりやすい
・絶対音感を持っている
・CMソングを一度聴いただけで、歌詞ではなくメロディを口ずさむことができる
・外国語の発音が上手
勉強方法・学習支援
おすすめ教材
漢字の覚え方も、耳からの勉強法を意識すると良いとされています。音楽的な音色やリズムで聞いた情報を認知するのも得意なので、リズムに乗せながら暗記するのも効果的です。
じゅもんのように唱えるだけで小学校で習う全漢字の書き方がスイスイ覚えられる教材などもおすすめです。
聞く読書のAmazon Audibleやオーディオブック聴き放題 - audiobook.jp
聴覚優位の人は天才?
聴覚優位も視覚優位同様に、聴覚優位だから「天才」とは限りませんが、その特性を活かせば高い能力を発揮する人が多くいます。
- 音感・語感の鋭さ:音楽、語学、リズムに強い
- 耳からの記憶:講義や会話を一度で覚えてしまう人も
- 瞬時の処理力:話の流れや意図を音から読み取る
- 表現力・話術の高さ:話す・伝える力に優れている
こうした能力が、スピーチ・音楽・語学・ディベート・交渉などの分野で活きると天才と呼ばれる結果につながりやすいのではないかと思われます。
以下の人物は、聴覚優位の能力を活かしている例です。
名前 | 分野 | 特徴 |
---|---|---|
モーツァルト | 音楽家 | 幼少期から「耳コピ」で楽曲を再現、音の天才 |
オバマ大統領 | 政治家 | 高いスピーチ力・言語表現力を持ち、言葉のリズムや聴衆の反応に対して非常に鋭い |
言語優位とは


言語優位の2つのタイプ
視覚優位と聴覚優位の他に、言語優位についても少しご紹介しておきます。言語優位の二つのタイプはこちら。言語優位は聴覚優位と重なることもあります。
- 言語優位:言語映像(ファンタジー)タイプ
読んだり聞いたりした内容を映像化して思考するタイプ
イメージを言語化できる - 言語優位:言語抽象(辞書)タイプ
読んだ文字や文章をそのまま言葉で思考するタイプ
英単語などは書いて覚える
勉強方法・学習支援
ちなみに私は「言語優位」なので、言葉から理解することが得意です。初対面の人の顔を覚えるのは苦手で、名前(字面)で覚えていることも。英単語や漢字などはひたすら書いて覚えるタイプでした。暗記系は語呂合わせが好きだったのも納得です。
診断方法 認知特性テスト
こちらの「医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書) [ 本田真美 ]」では質問形式でどのタイプが優性か知ることができます。


Kindle Unlimitedでは無料で読むことが可能です。
中学生くらいから答えることはできると思います。どうしても息子がどっちの認知特性なのかわからなかったのですが、この認知テストでとても理解ができました。
大人の認知特性テストは、子供では答えるのがが難しい問いもあります。こちらは2024年に発売されたばかりの子ども用の認知特性を理解するための本です。とてもわかりやすく認知特性について解説してあるので、お子さんの認知特性を知るにはおすすめの一冊です。
わが家のギフテッド2E児の認知特性は
上記のチェックリストによると、わが家のアスペルガー傾向(ASD)のギフテッド2E男子の場合、圧倒的に「聴覚優位のサウンドタイプ」でした。
この結果自体は想定内であり、やっぱりそうだよねと思ったのですが、そうなると数年前にWISCを受けた時に、実際に検査をしてくださった心理士さんから言われた言葉が引っ掛かります。
以前「IQはいくつからギフテッド?」の記事内で記載していますが、



聞いて処理するよりも視覚的に見て考えるほうが得意なのでスケジュール表などを利用する。但し情報量が多すぎるとどこに注目したらよいかわからないため、シンプルなほうが良い。
視覚刺激を提示する際は、情報量を絞って、言葉での説明を加える。手順を示し続けてワーキングメモリの弱さに配慮する。
「聴覚優位のサウンドタイプ」なのでこれは当てはまらないのではないか。と思われるかもしれませんが、実際小学生の頃は1日のスケジュール、やることを見える化することでスムーズにいくこともあったのも事実。
壁に貼り紙をしていましたが、ワーキングメモリの弱さや実行機能の弱さには視覚的に訴えることはとても効果的でした。
この辺りが腑に落ちなかったのですが、調べていくうちにとても興味深い文献を見つけました。
こちらの文献では自閉症スペクトラムにおける「視覚優位」という言葉の曖昧さについて述べています。
視覚的情報は一過性ではなく安定していることが多いこと,注意を向けやすいこと,反復参照可能なので記憶しなければならないという負担が少ないことから,聴覚的情報(特に音声言語)よりも処理しやすい。つまり個人の処理能力の優劣ではなく,処理しやすさについての情報の側の優劣と言うべきではなかろうか。つまり「視覚的支援」の有効性を言うために 「視覚優位」という言い方がされるようになったのであろう。
〜中略〜
筆者は,自閉症スペクトラムの人の視覚情報処理能力が絶対的に優れているというよりも,視覚的支援が実際に効果的なので,視覚的情報の方が聴覚的情報よりも処理しやすいという点で優位に立つという意味だと考えている。
引用元 自閉症スペクトラムにみられる「視覚優位」門 眞一郎
つまり「視覚的な支援」の方が「聴覚的な支援」よりも効果があるという意味での「視覚優位」ではないかとしています。
確かに、私が上記のように言われたのはWISCの検査後に心理士さんから支援方法として言われました。支援方法として「視覚的な支援が優位」という意味では納得できます。


視覚の記憶はあるけれど、覚えるのは音で
息子は2歳の頃から「カメラアイ(映像記憶)」のような特性があり、風景を写真のように思い出すことができます。しかし、彼自身はそのカメラアイを勉強には使えないとのこと。つまり「見たから覚えられる」というわけではないそうです。
一方で、彼は聴覚を使った暗記が非常に得意です。ひたすら口に出して唱えながら、時には同時に書きながら覚える。そんな独自の学習スタイルを持っています。
英語の教科書の暗唱や古文の暗唱課題などは数ページ分の暗唱課題も、クラスで一番に合格してしまうほど。
こうして振り返ってみると、やはりギフテッド2Eや発達障害のある子どもにおいては、「視覚優位」「聴覚優位」といった単純なラベルでは説明しきれないものがあります。
息子の場合も、複数の特性が影響し合いながら、自分に合ったユニークな学習方法を自然と見つけているように感じます。
「〇〇優位だから、こうするべき」と決めつけるのではなく、一つひとつの困りごとや特性に目を向けながら柔軟に対応していく。それが、2Eの子どもたちの学びやすさに繋がるのではないでしょうか。


特性にあった学び方で子どもの力を伸ばそう
認知特性は「得意・不得意」ではなく、「脳の使い方の違い」です。どちらが優れているといった優劣はありません。それぞれに強みがあり、場面によって活かし方が変わります。
「うちの子、学校のやり方では伸び悩んでいるかも…」と感じたら、認知特性に合った学び方で学んでいるか見直してみると良いかもしれません。
子どもの特性を理解して、その子に合った勉強法を取り入れることで学習効率が上がり、ぐんと伸びる可能性があります。
続いて、情報処理の特性についてはこちらも是非☟


参考書籍
・ギフテッド 天才の育て方 (ヒューマンケアブックス)
・医師のつくった「頭のよさ」テスト~認知特性から見た6つのパターン~ (光文社新書)
・子どもの「ほんとうの才能」を最大限に伸ばす方法: 認知特性タイプを知って隠れた「得意」を掘り起こす!