
うちの子ギフテッドかもしれない
「もしかしたらうちの子、天才?!ギフテッド?」と思われた方は必見。赤ちゃんの頃のギフテッドは一体どんな様子なのでしょうか。
近年、文部科学省(以下「文科省」)が掲げる「個別最適な学び」や「多様な学びの機会の保障」の考え方の中で、幼少期からの才能・特性の把握・支援に対する関心が高まっています。
令和5年度には「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」が実施され、支援プログラムの整理が行われています。
また、今後の学習指導要領改定においても、生成AIや情報科領域の拡大だけでなく、子どもの多様な能力・発達を捉える視点が強化される見通しです。


こうした背景を受けて、「ギフテッド」という言葉を使わずとも、「特異な才能」を広く捉え、乳児期(0〜1歳)からの発達の兆しに意識を向けることが、親としての新たな視点となってきています。
この時期はまだ「ギフテッドかギフテッドではないか」を定義する段階ではありませんが、普通とは少し違う早さや傾向を知っておくことで、後の支援や観察のヒントとなります。
- 0歳〜1歳の「ギフテッド傾向」に見られる発達のサイン
- 親ができる観察と関わりのヒント
ギフテッドの特徴については詳しく別の記事で紹介しています☟


ギフテッドの早期認識は難しい
ギフテッドは「生まれつきの特性」と言われますが、0歳〜1歳の段階で判別するのは難しいとされています。
Dembinski & Mauser(1978)の研究では、3〜5歳の子どもで約35%が親によりギフテッドと認識されていました。
残りの65%は6歳以降、学校生活や知的行動を通じて気づかれたケースです。
つまり、乳児期は親の観察力がカギですが、判別は簡単ではありません。
海外の研究者、Linda Kreger Silverman氏の「Early Signs of Giftedness」によれば、ギフテッドの赤ちゃんには早くから特徴的な兆候が見られることがあるとされています。
赤ちゃんに見られるギフテッドの特徴(Early Signs of Giftednessより)
- 警戒心が強い
- 長い時間、物体を見つめる
- 運動能力の発達が早い(例:6ヶ月頃で歩き始める)
- 1歳の誕生日までに歩く割合は83%以上
- 一定期間、両利きを使うことがある
- 言葉や語彙の習得が早い
- 早く喋り出す
- 早ければ生後1ヶ月頃から、動く物体を目で追ったり笑ったりする
- 生後7ヶ月頃で絵本から特定のものを選ぶ、色や数字、アルファベットを覚える
ただし、全ての赤ちゃんに当てはまるわけではなく、アインシュタインのように5歳まで言葉を発さないギフテッドも存在します
もし、早期にお子さんをギフテッドかどうかを知りたい場合は成長の記録を細かく書き留めておくと、とても参考になります。わが家は誕生した日から3歳まで育児日記をつけており、後々、生育歴を聞かれた時に、とても役に立ちました。
【実例】0歳〜1歳に見られるギフテッドの兆しとは?



ギフテッドかもしれませんよ
わが子がギフテッドの可能性を指摘されたのは9歳の頃でしたが、赤ちゃん期の成長記録を振り返ると、際立った発達がいくつか見られました。0歳〜1歳の赤ちゃん期でも、集中力・運動・感覚・言語・探究心・自立心など多方面で際立った発達が見られることがあります。
ここでは実際の息子の育児日記をもとに、特に印象的だった特徴を紹介します。
0歳(生後0か月〜11か月)の特徴
- 鋭い眼差し 生まれた瞬間から深く周囲を見つめる
- 集中力の高さ おもちゃや回転するもの、光や影などに長時間集中
- 運動発達の早さ
生後3カ月:寝返り
生後6カ月:腰がすわる→すぐにつかまり立ち
生後6カ月後半:伝い歩き
生後9カ月:2〜3歩、支えなしで歩く
生後10カ月:靴を履いて公園デビュー
ずり這いは少ししたものの、いわゆる「ハイハイ」の時期はほとんどありませんでした。周囲の同じ月齢の子どもたちがハイハイをしている中、一人だけ歩いているというくらい発達の差がありました。
- 音への興味
- 自我の芽生えと意思表示 ベビーカーに長時間乗ることを嫌がるなど
1歳(1歳0か月〜1歳11か月)の特徴
1歳1か月:音や絵本への反応
- 音の鳴る絵本が大好き、手拍子でリズムを楽しむ
- キャップを回す、シールを剥がす、パンケーキをフォークで刺すなど器用さが目立つ
- 「きんぎょがにげたの絵本読む?」と聞くと本を持ってくるなど意思疎通ができる
1歳2〜3か月:言葉の爆発期とトイレへの関心
- 「パパ」「ママ」「バイバイ」「ブーブー」「わんわん」など単語が急増
- うんちが出るとおむつを持ってきて、ころんと寝転がるなど、自発的な行動がみられる
- 意思疎通がスムーズになり、「育てやすい」と感じる
1歳4〜5か月:体の部位や物の名前を認識
- 「頭はどこ?」「目は?」と聞くと指差す
- 毎日『こどもずかん』を使い、物の名前を覚える
1歳6〜7か月:トイレトレーニング開始
- トイレで排泄をするものだという認識があり、「ちっち」と言ってトイレでできる
1歳8〜9か月:自立した行動と二語文
- 靴下を洗濯機に入れる、使ったお皿を片付けるなど自主的行動
- 「さっき○○した」「昨日○○だった」など二語文で時系列の会話ができる
1歳10〜11か月:自我の芽生え
- 「じぶん!!」と主張し、自分で着替えや食事をしたがる
- 吸盤付きの皿を使うなど、自己主体性を尊重
自我の芽生えとわがままは紙一重。親としては、心の余裕と時間の余裕を持って行動するようにしていました。
探究活動の盛んさ
- 初めて出会うものへの好奇心が強く、確かめる行動が多い
- キッチンの扉を開け、中の食品や袋の触感や音を楽しむ
「探索活動」とは見たい、触りたい、確かめたい、といった気持ちが芽生え、初めて出会うものに対して興味を抱き、どのようなものかを知ろうとする行動です。自分で動けるようになる半年前後から始まるとされています。
扉の中に入っているものは鰹節や春雨や海苔などのストックなのですが、パリパリした袋の音を楽しんだり、触感を楽しんだり‥。扉ガードなどがよくベビー用品で売っていますが、全部の扉をガードで閉めるのではなく、危ないものが入っていない場所は息子が遊んでもいいようにそのままにしておきました。
ギフテッドの睡眠時間は短い?
育児日記によると、5、6カ月の頃、1日のうち20時間寝ている日があったと書いてありました。
10カ月くらいまでは1日3、4回お昼寝をすることもあり、とにかくよく寝る子でした。
寝起きにぐずることもほとんどなく、起きる時はパッとあたかも寝ていなかったかのように起きます。
ギフテッドは睡眠が短いとか、寝ないと言われますが、息子はこの頃は睡眠は一度寝るととても深く、多少の音では起きませんでした。
この長時間の睡眠は9歳くらいまで続きましたが、9歳くらいから一気に睡眠が短くなります。9歳以降はやりたいことが多すぎて24時間では足りず、結局睡眠時間を削るようになりました。
ギフテッドのバイブル本によると睡眠についても記載があります。
ギフテッド児のあらゆる特性の根本に流れているのが突出した激しさで、これが、おそらくもっとも重要な特性だろう。
引用元「わが子がギフティッドかもしれないと思ったら: 問題解決と飛躍のための実践的ガイド」ジェームス・T・ウェブ p.40
激しさはかんしゃく、きょうだい間の張り合い、大人との衝突など、あらゆるところに浸透している。
睡眠パターンすら激しさを伴う。眠るときは猛烈に眠り、なかなか目覚めない。


親ができる観察と関わりのヒント
0〜1歳はまだ「評価」ではなく「観察と理解」の時期。
親の役割は「早期教育」や「早く伸ばす」ことではなく、この子のペースを見守ることです。
比較せず「興味の方向」に注目する
SNSや育児書にある平均発達とは違っても大丈夫。
「どんなことに夢中になる?」「どんな刺激を嫌がる?」「何に興味を示す?」という観察の質を大切に。
興味を広げる環境を整える
光・音・触感・動きなど、赤ちゃんが探索できる環境を。
安全に自分で試せる場が、学びの芽を伸ばします。
記録をする
- 成長の記録を細かく書き留める
- 乳児期の反応や行動を観察してメモしておく
後の発達相談や教育機関での確認時に非常に役立ちます。
ギフテッドの赤ちゃんのは成長が早い 30%早熟とのデータも
発達が早いことは才能の一面かもしれませんが、それだけでギフテッドとは限りません。
むしろ重要なのは、「どのように考え、どう学んでいるか」という学び方の質です。このような思考の深さや柔軟さこそ、ギフテッドの特徴とされています。
一方で、オーストラリアのギフテッド研究機関 GERRIC によると、ギフテッドの赤ちゃんや未就学児は、一般的な発達の子に比べて、運動能力を除くほとんどの領域で30%以上発達が早いことが報告されています。
早くスキルを習得する傾向があり、GERRICが長年の研究を通じて収集したデータをもとにガイドラインとしてチャート化されています。
以下の表は、一般的な赤ちゃんの成長過程とギフテッドの兆候がある赤ちゃん、さらに実例として息子の発達を比較したものです。
私自身、当時はギフテッドという言葉には出会っておらず、ただ成長を書き留めていただけなのですが、当てはまる項目も多かったので、参考までに「一般的な成長過程」と、「ギフテッドの兆候のある赤ちゃんの発達」と、「息子の発達」を表にしておきます。
全身運動の例


微細運動の例


言語認知の例


※3語文の項目に関しては、日本語で言う2語文を話し始めた時期としています。
参照 Gifted Baby / Toddler Milestones as developed by GERRIC
結局、ギフテッドは何歳でわかるのか?
では、いつ、どのタイミングでギフテッド2E(Twice Exceptional)であることがわかるのでしょうか。
息子の場合は9歳4ヶ月で認定されました。
なぜ9歳までわからなかったのか
当時は「ギフテッド」という言葉自体があまり知られておらず、私自身もその概念について知識がありませんでした。
両親のどちらかがギフテッドの知識を持っていた場合や、自身がそうであった場合には、もっと早く気づけたかもしれません。
そして、わが家の場合は育てていて「うちの子賢いかもしれない」と思ったから病院に行き、ギフテッドと認定されたわけではありません。
実際、トイレトレーニングはスムーズで、ごはんも早い段階から一人で食べようとし、意思疎通も早くからできるなど、「手のかからない育てやすい子」だと感じていました。
しかし、実際はとんでもなく育てにくいのがギフテッドなのです。
親がギフテッドの知識を持たない場合、その「とんでもなく育てにくいかもしれない」と思ったときがギフテッドとわかるときなのではないかと思います。
ギフテッドと気づくきっかけ
ギフテッドと気づくきっかけの一つに、小学校入学後が挙げられます。
- 先生からの連絡が増える
- 友達との衝突が起きる
- 家でも理解しがたい行動が見られる
こうした日々の出来事を通して、息子自身も「自分は周りと何か違う」と気づき始めました。
興味の対象が他の子どもと違う、会話が噛み合わない、といったことも言い始めました。
そして、学校では注意されても直せず、先生に怒られる回数も増え、何か発達の問題があるのではないかと思い、発達の専門クリニックを受診します。そこで実施されたのがWISC-4(ウィスク)という知能検査でした。
WISC-4(ウィスク)検査で初めてわかる
発達の専門クリニックで実施されたWISC-4(知能検査)の結果、
- 非常に高いIQ
- スコアに大きな凸凹(発達のアンバランス)
が明らかになり、この時、初めて「ギフテッド2E」という言葉と向き合うことになりました。
結果はこちら


よくある質問
- ギフテッド(高能力児)は乳児期から見分けられますか?
-
乳児期(0〜1歳)でも、発達の早さや感覚の鋭さなど、通常より早く成長するサインが見られることがあります。ただし、この時期に「ギフテッド」と確定するのは難しく、あくまで発達の傾向として捉えるのがポイントです。
- 赤ちゃんの頃に見られるギフテッドの早期サインにはどんなものがありますか?
-
「じっと物を観察する集中力がある」「運動能力の発達が早い」「言葉の理解や発語が早い」「音や光への反応が鋭い」などが挙げられます。ただし、すべてのギフテッド児に共通するわけではありません。
まとめ
ギフテッドの姿は本当にさまざまです。
100人いれば100通りの特性があると言われるほどで、「いつ」「どのように」気づくか」には大きな個人差があります。
誰かと比べて焦るのではなく、その子自身のペースや特性を見守ることが最も大切です。
さらに近年では、文部科学省が推進する「個別最適な学び」や「多様な学びの保障」の一環として、特異な才能を持つ子どもへの早期支援が社会的・教育的にも注目されています。NHKの教育特集でも専門家は次のように指摘しています。
「才能は早期に発見することより、子どもの特性を理解し、伸ばす環境を整えることが重要です」


また、必ずしもギフテッドの赤ちゃん期が上記のような成長過程というわけではなく、あくまでも息子の場合の成長の記録となりますことご理解ください。
【2歳の頃へつづく☟】


わが子が医師に「ギフテッドかもしれない」と言われた時代にはまだ出版されていなかった本ですが、もしお子様や身近な方で思い当たる人がいらっしゃる場合、下記の本を一読することをお勧めします。






