「うちの子、こんなに育てにくかったっけ?」「どうして毎日怒鳴ってばかりなんだろう」小学校高学年になった頃、毎日のように悩んでいました。
そして色々調べているうちに「二次障害」という言葉に出会います。当時、息子が抱えていたこととして発達障害の特性に加えて、周囲とのミスマッチ、環境ストレスなど、さまざまな要因がありました。
このページでは、私たち親子の体験をもとに、以下の内容についてできるだけわかりやすくまとめています。
- 発達障害と二次障害の関係
- よくあるサインや兆候
- 家庭でできる関わり方の工夫
- 支援先に相談すべきタイミング
「これって発達の問題?」「二次障害かもしれない」と感じている方のヒントになれば幸いです。
二次障害とは
発達障害などの一次障害を原因として周囲からの理解が得られず、繰り返し注意されたり、不安な経験をしたりすることで、自己肯定感が下がり、うつ病、不安障害、反抗挑発症などの症状が発生している状態のこと
※ここでは一次障害を発達障害としていますが、病気やケガなどで生じた最初の障害を一次障害といいます。
主な原因
- 繰り返し叱られる・注意される
- 成功体験が乏しい
- 学校や家庭での不適応
- 自己肯定感の低下
原因としては、発達障害などの一次障害の特性を理解してもらえなかったり、学校や家庭など合わない環境で過ごし、適応しようとするもできなかった時に、二次的に精神症状や不適切な行動が起きるとされています。発達障害があったとしても必ずしも「二次障害」が起きるわけではありません。周りの理解や支援があったり、自己理解がある場合、二次障害にならないケースももちろんあります。
二次障害症状は大きく2パターンあり、内在化障害と外在化障害に分類されます。息子はこの外在化障害のような感じでした。
内在化障害(自分の内側に向かう症状)
- うつ・不安障害
- 強迫性障害・対人恐怖症
- 引きこもり・依存症・摂食障害 など
外在化障害(他人や環境に向かう症状)
- 反抗挑発症(ODD)
- 素行症(CD)
- 暴力・非行・反社会的行動 など
反抗挑発症(ODD)とは?
怒りにもとづいた不服従、反抗、挑戦的行動の持続的様式と表現される児童期の精神障害である。これらの行動は通常の児童の行動の範囲を越えたもので、権威的人物に向けられる。また診断には、6か月以上の持続を必要とする
引用元 「反抗挑発症」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。最終更新 2022年4月10日 (日) 00:51 UTC
反抗挑発症は、しばしば素行症の診断に先立って見られる傾向があります。
診断基準
診断基準は、そのうちの4つ以上を少なくとも6ヶ月以上持続して示すときに診断されます。
A.怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも6ヵ月間は持続し、以下のカテゴリーのいずれか少なくとも4症状以上が、同胞以外の少なくとも1人以上の人物とのやりとりにおいて示されている。
怒りっぽく/易怒的な気分
- しばしばかんしゃくを起こす。
- しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい。
- しばしば怒り、腹を立てる。
口論好き/挑発的な行動
- しばしば権威ある人物や、または子どもや青年の場合では大人と、口論する。
- しばしば権威ある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する。
- しばしば故意に人をいらだたせる。
- しばしば自分の失敗、また不作法を他人のせいにする。
執念深さ
- 過去6ヵ月間に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある。
B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例・家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他者の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。
C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中にのみ起こるものではない。同様に重篤気分調節症の基準は満たさない。
参考文献 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
一般的な反抗との違いは?
持続性と頻度の違いにあり、5才未満の場合は少なくとも6ヵ月間にわたってほぼ毎日出現するとされています。本来落ち着いてくる5歳以降の場合は少なくとも6ヵ月間にわたって週に一回はこれらの行動が出現する場合とされています。
このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となる一方、その他の要因、例えばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮するべきであるとしています。
息子の場合
息子はこの全ての項目に当てはまる状態でした。特に、以下のような行動が目立ちました。
- 気に入らないとすぐ怒る・暴言を吐く
- 口論で大人を言い負かそうとする
- わざとイライラさせてくる
- 自分の失敗を常に誰かのせいにする
当時の様子については以下の記事に詳しく書いています。
素行症/行為障害(CD)とは?
反復して持続的な、反社会的、攻撃的、また反抗的な行動パターンを特徴とし、年齢相当の社会規範や規則を大きく逸脱している状態
引用元 「行為障害」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』最終更新 2021年12月30日 (木) 02:08 UTC
人に迷惑をかけたり、年相応のルールに従わないことを繰り返すことが、基本的な診断要件になっています。素行症(Conduct Disorder)は、通常の子どもっぽい悪戯や青年期の反抗に比べてより重篤でなければならないとしています。法律違反や暴力行為を含むこともあります。
診断基準
以下の15項目のうち3項目以上が過去12ヶ月に、1つ以上が過去6ヶ月に該当。
A.他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12ヵ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6ヵ月の間に存在したことによって明らかとなる。
人および動物に対する攻撃性
- しばしば他人をいじめ、脅迫し、威嚇する。
- しばしば取っ組み合いのけんかを始める。
- 他人に重大な身体的危害を与えるような武器を使用したことがある(例:バット、煉瓦、割れた瓶、ナイフ、銃)。
- 人に対して身体的に残酷であった。
- 動物に対して身体的に残酷であった。
- 被害者の面前での盗みをしたことがある(例:人に襲いかかる強盗、ひったくり、強奪、凶器を使っての強盗)。
- 性行為を強いたことがある。
所有物の破壊
- 重大な損害を与えるために故意に放火したことがある。
- 故意に他人の所有物を破壊したことがある(放火以外で)。
虚偽性や窃盗
- 他人の住居、建造物、または車に侵入したことがある。
- 故物または好意を得たり、または義務を逃れるためしばしば嘘をつく(例:他人をだます)。
- 被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)
重大な規則違反
- 親の禁止にもかかわらず、しばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。
- 親または親代わりの人の家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが1回あった。
- しばしば学校を怠ける行為が13歳未満から始まる
B.その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている
C.その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティ障害の基準を満たさない。
参考文献『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
二次障害の反抗挑発症・素行症の治し方とは?
ここでは、子どもの行動を「矯正」して治すのではなく、「背景にあるつらさや困りごとに寄り添いながら、適切な支援を行っていく」視点から治し方についてお伝えします。家庭でできる対応、医師に提案された専門的な治療法、また、生活環境の整え方を体験談に基づいて解説します。
親ができること 家庭での対応の基本
家庭は子どもにとって安全基地であるべき場所です。まず大切なのは、「叱ること」より「理解すること」。反抗的な態度や暴言・暴力の裏には、強い不安・混乱・過剰なストレスが隠れていることがあります。
- 感情的に叱りつけるのではなく、冷静に「気持ちを言葉にする」サポートを。
- できたこと、我慢できたことを小さくても具体的に褒める。
- 攻撃的な行動を「悪意」ととらえず、「サイン」として受け取る。
ギフテッドの子は「正義感が強い」「理屈っぽい」などの特性もあり、親がルールを押しつけると激しく抵抗することもあります。意見を聞き、納得感を持たせる関わりが効果的です。
環境調整がカギ 学校・家庭のストレス源を見直す
行動問題は、子ども自身の「問題」ではなく、「環境との不適合」であることが多いです。
- 学校での過度な集団行動や先生の指示がストレスになっていないか?
- 家庭で日々叱責ばかりになっていないか?
- きょうだい関係や親のストレスが影響していないか?
可能であれば、担任やスクールカウンセラーと連携し、学校での配慮(休み時間の過ごし方、指示の出し方、学習の個別化など)をお願いするのも効果的です。
否定より「理解と共感」本人の気持ちに寄り添う姿勢を
「なんでこんなことするの!」と子どもの行動を否定するのではなく、まず「どうしてそんなことをしたのか」を丁寧に聞く姿勢が重要です。
- 「○○が嫌だったんだね」
- 「イライラしたんだよね」
- 「それはつらかったね」
子ども自身も「なんでこんな行動を取ってしまったのか、うまく言葉にできない」ことが多いため、大人が代弁し、言語化を手伝うことが感情のコントロール力につながります。
早めの専門機関への相談を
家庭内の対応だけで限界を感じるようであれば、早めに専門家へ相談を。以下のような窓口が役立ちます。
- 小児精神科・児童精神科
- 発達外来(自治体の療育センターなど)
- 心理士・臨床心理士が常駐するカウンセリングルーム
- 児童相談所(深刻なケース)
医師の診断がつくことで、支援や通院、学校の配慮が受けやすくなることがあります。
薬物療法は必要?治療の選択肢
反抗挑発症や素行症自体には、特効薬はありません。ただし、併存するADHD・不安障害・うつ傾向などが強い場合は、薬によるサポートが効果的なこともあります。
- ADHD由来の衝動性や多動性が強い → 中枢刺激薬や非刺激薬
- 不安・イライラ・攻撃性が強い → 抗うつ薬や抗不安薬、気分安定薬
薬に対して抵抗感を持つ保護者も多いですが、医師とよく相談し、「今のつらさをやわらげる一手段」として柔軟に考えることも大切です。
認知行動療法(CBT)などの心理療法も効果的
反抗挑発症や素行症では、「怒りが爆発する前に対処する力」「考え方の癖を変える力」が必要です。以下のような心理療法が効果的です。
- 認知行動療法(CBT):感情と行動のパターンに気づき、コントロール方法を学ぶ
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):他人との関わり方やトラブル回避の練習
- プレイセラピー:遊びを通して感情を表現する幼児向け療法
学校のスクールカウンセラーや外部の臨床心理士を活用するのも一つの方法です。
二次障害かと思ったら
発達障害のある人は精神疾患合併のリスクが高いとされています。決して一人で抱え込まず、周りの大人でサポートしていく必要があります。
わが家はとにかく支援を受けられそうなところをかたっぱしから電話をかけていきました。
大体どこもそうなのですが、数カ月予約待ちだったり、たらい回しにされたりとすぐにはなかなか相談できませんでした。それでも、一つ一つ一番近い日時で予約を取っていき、最終的に息子や私たち親が長期的に相談できそうなところを何カ所か選びました。
児童相談所や警察は、「この程度」で相談してもいいのだろうかとためらうかもしれませんが、「この程度」を放っておくことは、決してお勧めしません。
児童相談所や警察は様々な事件や案件を抱えているので多忙は多忙なのですが、きっと対応してくれます。

相談できる機関
以下、二次障害の相談ができる機関です。
児童相談所
児童相談所は、すべての都道府県に最低1以上の児童相談所が設置されており、都道府県によってはその規模や地理的状況に応じて複数の児童相談所およびその支所を設置しています。
相談内容としては、養護相談、保健相談、心身障害相談、非行相談、育成相談といった内容の相談ができます。
警察
事件や事故だけではなく、子どものことで悩みを抱えているご家族やいじめ、犯罪等の被害に遭い、悩んでいる子ども自身のために、少年相談窓口を開設しています。緊急時はもちろんですが、相談窓口として相談することもできます。
警視庁少年相談ヤングテレホンコーナー(警視庁少年相談係)
発達障害者支援センター
発達障害児への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。都道府県・指定都市自ら、または、都道府県知事等が指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人等が運営しています。発達障害児とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行っています。
精神保健福祉センター
地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進から、社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のための援助に至るまで、広範囲にわたっています。こちらも都道府県単位、または政令指定都市に設置されています。
ひきこもり地域支援センター
社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師等の資格を持つひきこもり支援コーディネーターが中心となって、地域における関係機関と連携しながら、ひきこもりに関する専門的な支援を行っています。
病院
うつ病の場合は薬もありますが、今のところ、反抗挑発症や素行症に効く薬はありません。なので、医療にどこまでできるかという問題もありますが、ペアレントトレーニング、認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニングなどは効果的とされています。病院でこういったサポートをしているところもあります。
また、一次障害へのアプローチも必要です。病院では、時には投薬治療をしたり、カウンセリングなどもできます。
予防法はある?二次障害にならないために
決して本人を責めるのではなく、周囲の大人が子どもの特性を否定せず、受け入れる姿勢が重要です。
また、自己肯定感を下げないために、子どもの得意や好きを伸ばしたり、叱責よりも共感的な声かけをすることも効果的です。
そして最後に親のストレスケアや相談先の確保も必要です。本当に育児に行き詰ると、気持ちが落ち込んだりやる気がなくなったりすることもあるかと思います。そんな親の態度やメンタルが子育てに影響することも。同じ悩みの親の会に参加したり、カウンセリングを受けるなど、予防には負のスパイラルにならないように、環境調整や専門家のサポートが不可欠です。
早めに対処することで、二次障害を予防することはできます。
参考文献 「非行と反抗がおさえられない子どもたち: 生物・心理・社会モデルから見る素行症・反抗挑発症の子へのアプローチ (子どものこころの発達を知るシリーズ 8)」富田 拓 (著)




