【ギフテッドとADHD】違いと共通点とは?誤診が多い理由も解説

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ADHDとギフテッドの違い

ギフテッドとADHDの違いは?
似ている特徴があるようだけど…

「ギフテッド」と「ADHD(注意欠如・多動症)」は一見似た行動特性を持つため、誤診されやすいという共通点があります。実際、ギフテッドの子どもがADHDと診断されるケースや、その逆も少なくありません。

この記事では、実体験を交えながら、ADHDとギフテッドの違いと共通点、そして見分けるためのヒントをわかりやすくお伝えします。

目次

ADHD(注意欠如・多動症)とは

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症のひとつです。代表的な症状は以下の通りです。

  • 注意が散漫で、集中が続かない
  • 衝動的に発言・行動する
  • じっとしていられず、身体を動かすことが多い
  • 忘れ物やミスが頻繁に起こる

厚生労働省のホームページによると、こういった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態で、12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。

👉 ポイント:行動を「抑えられない」「コントロールできない」ことが根本にある。

ギフテッドとは

ギフテッドとは、生まれつき平均よりも著しく高い知的能力や才能を持つ人を指します。IQで表すと130以上が目安とされることが多いですが、数値だけでなく以下のような特性が見られることもあります。

  • 学習速度が非常に速い
  • 特定の分野に極端に強い関心を示す
  • 高い抽象思考力・論理的思考力
  • 感受性が強く、感情の起伏が激しいことも

周りの同世代の子供より成長が早かったり、一般的な成長過程と異なるため、「ちょっと周りと違うかも」と親が気づくケースがあります。

また、努力して優秀な成績を修める「秀才」とは異なります。先天的とされているため、後天的に「ギフテッドになる」ということはありません。

「ギフテッド=天才」と称されることもありますが、「万能な天才」というよりは、多くのギフテッドは「特定の分野において突出した能力があるが、支援が必要な子」です。

👉 ポイント:認知的に高度な処理ができる一方で、感情面・社会性にアンバランスがある。

ギフテッドの特徴についてはこちらに詳しく記載しています☟

ギフテッドとADHDどっち?似ている点

ADHDとギフテッドの子どもは、以下のような点で行動が似て見えることがあります。

  • 授業中にボーッとしている
  • 話を聞いていない
  • 興味があることには驚異的に集中する
  • 落ち着きがない・体をよく動かす
  • 衝動的な発言や行動をする
  • 周囲とペースが合わない

こうした行動から、ギフテッドの子どもがADHDと誤解されることもあります。

ADHDとギフテッドの両方を持つ子もいる(=2E)

ここで大切なのは、「ADHDかギフテッドか、どちらか1つに分類する必要はない」ということです。
実際には、両方の特性を併せ持つ「2E(Twice Exceptional)」と呼ばれる子どもも多く存在します。「2E」というのは、「ギフテッド」+「ADHD」、「ギフテッド」+「ASD」、「ギフテッド」+「LD」といった、発達障害の症状を併せ持つ子のことです。

たとえば、

  • 授業中に立ち歩く → ADHD由来の多動性+ギフテッド由来の退屈さ
  • 感情の起伏が激しい → ASDやHSP傾向+ギフテッドの感受性

など、特性が重なり合って複雑に見えるケースも少なくありません。


ギフテッド児は、知的障害を例外として、ADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などの発達障害にもなるとされています

つまり、ギフテッドかADHDかどちらかではく、両方を持ち合わせていることもあります。

【実体験】発達障害を疑いWISCを受ける

実際に息子も学校での問題行動が目立つようになり、発達障害を疑い小学生4年生で発達検査を受けます。

検査の結果、「ギフテッド(高知能)+ASD傾向」の2E(Twice-Exceptional)である可能性が高い」と指摘されました。WISCを受けた後に、ADHDとギフテッドの違いとして医師に言われたこととしては

ADHDの場合は場面を選ばず、どんなときも多動になります。
息子さんの場合はいつもというわけではなく、息子さんの話を聞くと理由があって多動になっている(例えば授業がつまらない、退屈、やることがないから手遊びをするなど)のでまたちょっと違います。

同じように見える「多動」でも、ADHDの場合は、いかなる状況下でも問題が生じるのに対し、ギフテッドの場合は、何らかの意図や理由があって多動が生じるとのことでした。

そのため、見極めが難しく、知識が十分ない医師の場合、誤診されてしまうことがあります。

2Eについてはこちら☟

2019年に春秋社から出版されたわが子がギフティッドかもしれないと思ったらー問題解決と飛躍のための実践的ガイド」(ジェームス・T・ウェブ 著、ジャネット・L・ゴア 著、エドワード・R・アメンド 著、アーリーン・R・デヴリーズ 著、⻆谷 詩織 訳)によると、

「ADHD児の行動特性は、創造性やギフティッドネス、あるいは過興奮性に起因する典型的な特性と似ていることが多いが、ギフティッドネス、過興奮性に起因する特性に対する的確な介入はADD/ADHD児への的確な介入と異なる」

との記載があります。ADHDによる特性なのか、ギフテッドによるものなのかを誤診されてしまうことは、本人にとっても周りの関わる人にとっても深刻な問題であるとしています。

どちらに起因しているかによって、支援方法が異なるため、慎重に判断する必要があります。

ギフテッドとADHDの違い

このようにギフテッドとADHDは類似している点が多いのですが、同じに見える行動も発達障害の枠組みだけで考えるのではなく教育環境が合っていない可能性に目を向けるよう、シャロン・リンドはADD/ADHD診断に連れていく前に親が慎重に吟味すべきチェックリスト15項目というものを作成しています。

ADHDの特徴ギフテッドの特徴
興味の有無に関係なく、注意が散りやすい。指示が通りにくいこともある。興味のないことには集中できないが、関心のあることには過集中になるほど没頭する。
思いついたら即行動。順番やルールを守るのが難しいことがある。頭の回転が速すぎて、思考が飛躍し、話の筋が見えにくいことがある。
ワーキングメモリ(短期記憶)が弱く、順序立てた作業が苦手。長期記憶や連想記憶が得意。独自の関連づけで情報を覚える力がある。
なぜ課題や活動を途中でやめてしまうのかの理由を説明できない。なぜ課題や活動を途中でやめてしまうのか,(子どもなりに)論理的に筋を通して説明できる。
テーマや活動が,その子自身にかかわるものや意味のあるものに感じても,不適切な行動は減らない。テーマや活動が,その子自身にかかわるものや意味のあるもののように感じると,不適切な行動が減る。
注意散漫に見える際に,何を指示されたか問うと答えることができない。注意散漫に見えていても,何を指示されたか問うと答えることができる。
特に明確な理由なく,課題から課題へとうつろう。複数の課題を同時並行で嬉々としてこなしていく。より多くを成し遂げ,より多くを学びたがる。
無意識に体を動かしたり、教室内を歩き回るなど、多動が見られる。アイデアや刺激が多すぎて、頭と体が同時に動いてしまうことがある。
カリキュラムを工夫しても行動に改善が見られない。カリキュラムを工夫することで不適切な行動が減る。
自身の不適切な行動について,その理由を説明できない。自身の不適切な行動の理由を,(子どもなりに)論理的に筋を通して説明する。
自分で自分がコントロールできないと感じている。その子が動き回っているとき,その子自身がそれを楽しんでおり,自分で自分がコントロールできないという感覚にはない。
不適切な行動は,状況に関係なくほぼ常に見られる。不適切な行動はどんなときにも見られるわけではない。教師や指導スタイルによって見られたり見られなかったりする。
空気が読めず、人とのやり取りでトラブルになりやすい。周囲より成熟した考えを持つことがあり、逆に孤立することもある。
その子に適した学力レベルの集団においても行動に改善が見られない。知的能力の高い仲間とかかわることで不適切な行動が減る。

参照 permitted to translate: Lind, S. (2011). Before Referring a Gifted Child for ADD/ADHD Evaluation.
http://sengifted.org/before-referring-a-gifted-child-for-addadhd-evaluation/

https://haruaki.shunjusha.co.jp/medias/RIHrj/uploads/files/kiyo39_2_07.pdf

日本語版 角谷詩織

困りごとや生きづらさを感じたら

「ADHDかギフテッドか、家庭では判断がつかない…」
そんなときは、早めに専門家に相談することが安心につながります。

相談機関としては、発達障害を専門に診る小児科や児童精神科、発達支援センターや、家庭支援センターなどでも相談にのってくれます。病院は何か月待ちというところも多いため、まずは地域の発達支援センターなどに問い合わせてみてもよいと思います。

相談すべきサイン

  • 集団生活で著しく困難が出ている(トラブル、指示が通らないなど)
  • 家庭での対応に限界を感じている(育てにくさ・疲弊)
  • 小学校入学を控え、「このままで大丈夫?」と不安がある
  • 感覚過敏や睡眠トラブルなど、複数の困りごとが重なっている
  • 「発達障害かも」と言われたが、能力の高さにも気づいている

主な検査方法

専門機関では以下のような心理検査を行います:

スクロールできます
検査名内容
WISC(知能検査)言語理解、処理速度、ワーキングメモリなどを測定
行動観察遊びや課題を通じて行動を記録
心理検査絵を描いたり、質問形式の心理テスト
保護者・教師アンケート日常の様子を多面的に記録

まとめ ADHDかギフテッドか迷ったときに大切なこと

「ADHDなのかギフテッドなのか、判断がつかない…」
そんなとき、焦って診断名やラベルを求める前に、大切にしてほしい視点があります。

1. 「困りごと」に目を向けよう

診断名よりも大事なのは、目の前の子どもが「どんな場面で困っているか」
学校生活での困難、友達関係、家での行動…その背景にある「認知特性(ものの見え方・感じ方)」を見つめることで、サポートの糸口が見えてきます。

2. 子ども自身の「強み」に目を向けよう

ギフテッドであれ、ADHDであれ、その子にしかない強みや個性があります。
過集中、独創性、言語能力、好奇心…困りごとと表裏一体である場合も多く、強みを伸ばす視点は自己肯定感を育てる鍵です。

3. 必要なら専門家につなげよう

「親だけで抱えきれない」と感じたときは、専門機関(発達相談、心理士、医師など)に相談することは適切な選択です
早めのサポートは、子どもの未来の選択肢を広げます。

最後にADHDとギフテッドは、行動の一部が似ていて見分けが難しいことがあります。
しかし、どちらも「子どもが持つ独自の発達特性」として捉えれば、支援の方向性は必ず見えてきます。

大切なのは、その子を理解しようとする姿勢です。

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